知らなかったでは済まされない家の中での事故事例 その2【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2022年06月02日 10時00分

今回も前回に引き続き、「知らなかったでは済まされない家の中での事故事例」と題し、実際に家事に携わってヒヤリとするまで気付くことができない、ともすると、事故を起こすまで気付けないかもしれない、家の中での事故事例をお知らせいたします。前回は、火災などの事故が起きる可能性が多いと思われる台所や調理の場での事故事例をお伝えしましたが、今回は「知らなかったでは済まされない家の中での事故事例 その2」として、家の中の台所以外の場所、調理以外の家事などで実際に起きた事故事例にClose UPです。新生活に慣れてきた今、この記事を参考にしていただくことで、事故を起こしてはじめて気づくのではなく、事故を未然に防ぐ手がかりになればと思います。

意外と危険が多い家の中

前回の「知らなかったでは済まされない家の中での事故事例 その1」を読んでくれた知人から、家の中でも思った以上に危険なことがあるのですね、という感想をいただきました。私たちは家について、落ち着いて過ごせる、安心できる場所だと思っていますが、実は危険がいっぱい潜んでいるのです(というのは言い過ぎですが…)。

今回も前回に引き続き、RISCAD Updateでは触れることが少ない家の中で起きている実際の事故事例を確認し、家の中で気をつけるべきポイントを見ていきたいと思います。関連する「さんぽのひろば」過去記事のリンクを文末に掲載しますので、そちらも参考にしていただき、事故を未然に防ぐ手がかりになればと思います。

 

暖房器具+洗濯物の火災

6月に入り、そろそろ梅雨のシーズン。暖房器具はもうしまったという方が多いかと思いますので、こちらは次の秋冬のための情報になるかもしれませんが、火気を使用する暖房器具に関連する火災は、台所での火災と並び多く起きています。その中でも、家事に関連する火災には以下のような事例があります。

2022/4 愛知・ガスファンヒータで洗濯物乾燥中に火災
木造2階建ての住宅でガスファンヒータを使用して洗濯物を乾燥中に火災が起きた。消防車など13台が約1時間半後に消火したが、同住宅が全焼した。同住宅の住人1名が首にやけどで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、ガスファンヒータを使用して洗濯物を乾燥しており、住人が入浴のために目を離した際に出火した可能性がある。

2022/4 富山・ストーブで衣類乾燥中に火災
住宅の2階でストーブを使用して衣類を乾燥中に火災が起きた。消防が約1時間後に消火した。住人3名は避難してけが人はなかった。

乾きにくい洗濯物を暖房器具の熱で早く乾かしたいという気持ちはよくわかります。しかし、洗濯物が落下した場合、落下したところに火気を使用した暖房器具があれば、着火して火災に至る可能性があります。

これからの梅雨の季節も洗濯物が乾きにくい季節ですが、このような事故を防ぐためには、ストーブ付近には洗濯物を干さないことが大事です。

 

暖房器具+スプレー缶の事故

次も暖房器具に関する事故事例ですが、スプレー缶(エアゾール缶)が関連したものになります。

2022/2 静岡・ストーブ使用中に殺虫剤を噴射して火災
木造2階建ての住宅でストーブ使用中に殺虫剤を噴射して火災が起きた。消防が約2時間後に消火したが、同住宅が全焼し、隣接する住宅の一部が焼けた。火元の住宅の住人1名が煙を吸って手当てを受けた。警察と消防の調べでは、ストーブ使用中に殺虫剤を噴射したため噴射剤の可燃性ガスに着火し、近くにあったごみ箱に延焼した可能性がある。

2022/5 神奈川・石油ストーブの上に置いたスプレー缶が破裂
木造2階建て住宅で石油ストーブの上に置かれたスプレー缶が破裂してガス爆発が起きた。消防が約15分後に消火したが、同住宅の窓ガラス8枚が割れ、天井や壁が破損した。同住宅の住人2名が足にやけどで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、石油ストーブに害虫駆除用のスプレーを乗せたまま使用したため、スプレー缶が加熱され、点火から約10分後に内圧が上昇して破裂し、漏洩した噴射剤の可燃性ガスにストーブの火で着火した可能性がある。

スプレー缶の噴射剤には可燃性ガスが使用されていることがあります。静岡での事例のように火気を使用している場所で噴射すれば、噴射剤が可燃性ガスであった場合は着火する可能性があります。また、神奈川での事例のように、スプレー缶を熱すると内圧が上昇して缶が破裂する可能性があります。その場合も、噴射剤が可燃性ガスであった場合、近くに火気があれば、破裂により缶から漏洩した噴射剤に着火する可能性があります。

実はこのような事例は、前回触れた台所などの火気を使用する調理の場でも起きています。例えば、台所で虫を発見し、ガスこんろの火を消さずに、噴射剤に可燃性ガスを使用したスプレー式の殺虫剤を噴射すれば、噴射剤にこんろの火で着火する可能性があります。また、ガスこんろやカセットボンベ式ガスこんろの使用時、その近くにスプレー缶やカセットコンロ用のガスボンベを置くことも、ボンベの内圧上昇による破裂などの事故につながる可能性があります。

いずれのケースも、状況によっては火災ばかりかガス爆発につながることがあり、大変危険ですので絶対にやめましょう。

なお、スプレー缶の噴射剤だけでなく、内容物が消防法危険物の引火性液体などに該当する場合もあります。容器に、LPG(液化石油ガス)、DME(ジメチルエーテル)、消防法危険物第4類第1石油類などの表示がないか、また、「火気と高温に注意」や「火気厳禁」といった注意書きがないか確認してみてください。

 

家電等の電気製品のトラブルによる火災

私たちの生活に欠かせないもののひとつに家電製品があります。冷蔵庫に洗濯機、電子レンジにエアコンにテレビと、その種類を上げていくと相当な数になります。そんな電気製品をめぐる事故には、以下のような事例があります。

2022/4 愛知・電化製品の配線から漏電して火災
木造2階建ての住宅で電化製品の配線から漏電して火災が起きた。消防が約6時間半後に消火したが、同住宅と別の木造2階建て住宅が全焼した。火元の住宅の住人が死亡した。警察と消防の調べでは、同住宅1階の居間にあった電化製品の配線に不具合が起きて漏電により出火した可能性がある。

2022/5 埼玉・エアコンの火災
木造2階建ての住宅でエアコンの火災が起きた。消防が消火したが、同住宅が全焼した。出火時、同住宅には住人2名がいたが、避難してけがはなかった。警察と消防の調べでは、同住宅1階のエアコンから出火した可能性がある。

電気製品が原因となる事故は、漏電や短絡、感電など様々ですが、やはり火災に至る事故は少なくないと考えられます。私たちにできることとしては、電気製品の正しい使用を心がけることや、古くなった電気製品を適宜更新することなどがあります。また、電気製品を使用する際に使用する電源ケーブルやコンセントの管理として、使用していない電源ケーブルのプラグをコンセントから抜いておくことや、使用していないコンセントにはコンセントキャップを装着してほこり等の侵入を防ぐこと、そして周辺に埃がたまらないようにこまめに掃除をすることなどを心がけましょう。

 

バッテリ等の充電中の事故

私たちの生活になくてはならない電気製品は家電以外にもあります。パソコンやタブレット、スマートフォンなどの情報端末も、もはや生活必需品に近いものになっていると感じられます。それらの普及に伴い、出先等で充電を行うためのモバイルバッテリなどが関連する事故が起きるようになりました。

2021/10 神奈川・合同庁舎の休憩室でモバイルバッテリ充電中に火災
地上23階地下3階建ての合同庁舎の2階の休憩室でモバイルバッテリ充電中に火災が起きた。消防車など30台以上が約2時間半後に鎮火したが、同休憩室約26平方mが焼けた。同室は無人で、けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同室は関東信越厚生局麻薬取締部横浜分室の休憩室で、職員が同日朝から大容量のモバイルバッテリ2台をコンセントに繋いで同室内の畳の上で充電中にバッテリから出火した可能性がある。

これは個人宅ではなくオフィスでの事故になりますが、モバイルバッテリの充電中の火災ということで、家の中でも同様の事故が起こり得ます。そしてもちろん、情報端末用のモバイルバッテリばかりが事故の原因になるわけではありません。

2022/2 神奈川・バッテリ充電中に火災
木造2階建て住宅の2階でバッテリ充電中に火災が起きた。消防車25台が約1時間半後に消火したが、同住宅の2階部分が焼けた。住人2名が喉や足に負傷した。警察と消防の調べでは、同住宅2階で充電中であったバッテリが発火して延焼した可能性がある。

2022/3 香川・リチウムイオン電池の充電中に火災
木造2階建ての住宅でリチウムイオン電池の充電中に火災が起きた。消防が約5時間後に消火したが、同住宅約600平方mが全焼した。住人1名が避難の際に顔などにやけどで軽傷を負った。警察と消防の調べでは、車椅子のタイヤの電動空気入れ用のリチウムイオン電池の充電中に、電池が発火して延焼した可能性がある。

神奈川の火災の原因となったバッテリは何に使用するものかの情報はありませんでしたが、香川の火災は充電中のタイヤの電動空気入れ用のリチウムイオン電池であったようです。このように、充電して使用するものはモバイルバッテリ以外にも多数あります。

バッテリ等の充電中の事故を防ぐために私たちにできることは、③の家電等の電気製品のトラブルによる火災で述べたことと同様に、充電が完了したバッテリおよび充電器はコンセントから抜いておくことや、充電するためのバッテリや充電器の電源を取るコンセント周辺に埃がたまらないようにこまめに掃除をすることなどがあげられます。

また、モバイルバッテリについては、多種多様な製品が出回るなかで、低品質のモバイルバッテリが原因となって起きる事故があるということも知っておいていただきたいことです。低品質のモバイルバッテリの中には、備わっているべき安全装置に不備があったり、ひどい場合には備わっていなかったりといったことがあります。事故が起きてしまっては、安かろう悪かろうでは済みません。モバイルバッテリの安全な使用に関しては、「さんぽのひろば」の過去の記事をご参照ください。

 

まとめ

以上、「知らなかったでは済まされない家の中での事故事例」について2回に分けてお送りしましたが、いかがだったでしょうか。既知のことも多かったとは思いますが、このほかにも家の中で起きうる事故は数多くあります。家の中を見回し、あらかじめ危険が潜んでいそうなところを確認して事故を未然に防ぐことで、より落ち着いて過ごせる、安心な環境を作って行きましょう。

 

【参考記事】

さんぽニュース編集員 伊藤貴子