モバイルバッテリを安全に使用するために(後編)【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

投稿日:2022年04月07日 10時00分

前回のRISCAD CloseUPでは、「モバイルバッテリを安全に使用するために(前編)」と題し、スマートフォンの台頭とともに私たちの身近なものとなったモバイルバッテリについて、これまでに実際に発生した事故事例を振り返りました。後編となる今回は、モバイルバッテリ関連の事故を起こさない、事故に遭わないために、私たちにできること、気をつけたいことを考えてみたいと思います。それでは2022年度最初のRISCAD CloseUP、「モバイルバッテリを安全に使用するために」(後編)スタートです。

前編掲載から約1ヶ月、その間にも事故が

前回の「モバイルバッテリを安全に使用するために(前編)」では、実際に発生したモバイルバッテリ関連の事故事例を振り返りました。それから約1ヶ月の間に、2件のモバイルバッテリ関連の事故が起きました。

2022/3/9 東京・駅のホームでモバイルバッテリの火災
駅のホームで利用客が所有するモバイルバッテリの火災が起きた。すぐに消火した。けが人はなかった。安全確認のため、列車が一時運転を見合わせた。

2022/3/13 東京・駅のホームに停車中の新幹線の座席でモバイルバッテリから発煙
駅のホームに停車中の新幹線で座席の間に挟まったモバイルバッテリから発煙した。同新幹線は折返し運転のため清掃中で、発煙に気づいた清掃作業員が鉄道会社に報告し、鉄道会社が消防に通報した。発煙はすぐに収まった。消防が消火した。けが人はなかった。同新幹線が運休し、約300名に影響が出た。警察と消防の調べでは、同モバイルバッテリは座席の間に挟まっており、乗客が置忘れた可能性がある。

いずれも駅のホームや新幹線の中といった公共の場での出火、発煙のため、注目されやすい事例であり、列車の運行に影響が出たこともあって大きく報道されたと考えられます。もしかしたら、報道されないような軽微な事故はもっと多く起きている可能性があります。

 

モバイルバッテリ関連の事故の主な原因

前編でも触れたように、モバイルバッテリにはリチウムイオン二次電池が内蔵されています。リチウムイオン二次電池は、一般に、強い衝撃や圧力が加わったり、高温の環境下にさらされたりすると、変形、破損するなどして、発煙、発火に至る場合があります。

前項で紹介した3/13の新幹線での事故を例に考えると、リチウムイオン二次電池の上記のような特性と、モバイルバッテリが座席の間に挟まっていたという状況から、座席に置き忘れられていたモバイルバッテリが何かの拍子に座席の間に挟まり(もしかしたら、モバイルバッテリが座席の間に挟まってしまったために、持ち主が置き忘れに気づかなかったのかもしれません)、座席のリクライニング調整や回転の際に、知らず知らずに圧力が加わるなどして発火する可能性などがあげられます。

大手コンピュータ周辺機器メーカのエレコム株式会社のサイトで、「モバイルバッテリー選びの役立つ基礎知識」「基礎知識vol.9 発火・発熱など、モバイルバッテリーのトラブルの原因と対策を紹介」でわかりやすく解説されていたので、こちらを参考に見ていきたいと思います。

このサイトでは、モバイルバッテリが発火する原因として、次の2つのことが紹介されています。

まず、内蔵されているリチウムイオン二次電池の劣化による場合です。それにより電解質の酸化でガスが発生し、ガスで膨張したモバイルバッテリに衝撃などが加わることで発火や爆発などの事故が起きる可能性があります。

そして次に、もともと低品質のモバイルバッテリを購入するなどし、使用してしまっている場合です。低品質のモバイルバッテリの中には、備わっているべき安全装置に不備があったり、ひどい場合には備わっていなかったりといったことがあります。そのようなモバイルバッテリを使用したことが原因で事故が起きる可能性があります。

 

モバイルバッテリを安全に使用するために

それでは、この後編の本題である、モバイルバッテリ関連の事故を起こさない、事故に遭わないために、私たちにできること、気をつけたいことについて考えていきたいと思います。

前項と同様に、エレコム株式会社のサイトを参考に見ていきたいと思います。

  • PSEマーク*がついている製品を使う
    →電気用品安全法により安全性基準を満たしている電化製品にはPSEマークがついています。PSEマークのあるモバイルバッテリを選んで使用するようにしましょう。
  • 熱対策を万全にする
    →モバイルバッテリでスマートフォンを充電していると、バッテリ、スマートフォンともに熱を持つことがありますが、スマートフォンを使用しながら充電すると、より熱を持ちやすくなります。あまりにもバッテリ、スマートフォンが熱を持つような場合にはスマートフォンを使用しながらの充電は避けましょう。また、未充電時のモバイルバッテリであったとしても、極端に熱くなる環境に放置することは危険なので避けましょう。
  • 強い衝撃を与えない
    →モバイルバッテリはなるべく丁寧に扱い、できるだけ強い衝撃を与えないようにしましょう。    

*モバイルバッテリなどの特定電気用品以外の電気用品に表示される
PSEマーク
 経済産業省 電気用品安全法の概要 「電気用品に付される表示」より


また、充電スピードが遅くなってきたり、異常に発熱するようになったりと、使用していて異変を感じることがあれば、バッテリの劣化かもしれません。古いものは処分し、新しいものと交換する判断をすることも重要です。

 

処分するまで安全に

最後に、モバイルバッテリは使用時の安全だけでなく、処分するまで安全を心がけましょう。

過去のRISCAD CloseUPで話題にしましたが、モバイルバッテリにも内蔵されている、リチウムイオン二次電池の廃棄時の事故が増えています。(リチウムイオン二次電池が関連する事故を防ぐために−廃棄編−【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

処分する際には、処分方法についてもしっかり確認し、廃棄時の事故を引き起こす原因とならないようにしましょう。

まずは必ず自治体の廃棄ルールを確認しましょう。本来リチウムイオン二次電池が廃棄されるべきでない区分の廃棄物に、破損・変形により発熱・発火する危険性が高いリチウムイオン二次電池が混入していたことが原因で起きたと考えられる、廃棄物収集車、廃棄物処理施設等での火災などの事故事例が多く見られます。つい先日も、リチウムイオン二次電池の誤廃棄が原因の可能性がある事故が起きました。

2022/3/28 新潟・廃棄物処理場の不燃廃棄物集積場でリチウムイオン電池の火災
廃棄物処理場の2階の不燃廃棄物集積場でリチウムイオン電池の火災が起きた。職員が消防に通報した。消防が約2時間半後に鎮火したが,同集積場内の不燃廃棄物約10平方mが焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは,同集積場内から焦げたリチウムイオン電池1個が発見されたことから,廃棄物にリチウムイオン電池が混入し,ごみ袋に入った不燃廃棄物を重機で集積場に押込む作業中に,同リチウムイオン電池に圧力や衝撃が加わり発火した可能性がある。自治体では,リチウムイオン電池は廃棄物として出してはいけない決まりになっていた。

モバイルバッテリに内蔵されているリチウムイオン二次電池は、小型二次電池としてリサイクルが可能です。家電量販店などにはリチウムイオン電池の回収ボックス(小型充電式電池リサイクルボックス)が設置されているところがありますので、持ち込んでリサイクルすることも考えましょう。

 

【参考情報】

【参考記事】

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子