自然災害に起因する産業事故「Natech」【週刊化学災害ニュースまとめ】2018年のニュースから RISCAD LookBack

今年も残すところあと5日。2018年の「さんぽのひろば」締めの記事は「RISCAD LookBack」です。2018年、印象に残ったトピックスを振り返ってみたいと思います。

投稿日:2018年12月26日 10時00分

ここ数年、毎年のように異常気象という言葉が聞かれるようになりました。異常気象と言われて思い浮かぶことといえば、大きな台風の上陸や集中豪雨、竜巻、猛暑に酷暑など。また、それに加え、大きな地震が頻発しています。このように様々な自然災害が日本列島を次々と襲っている印象があります。

以前、RISCAD CloseUPでも、「自然災害に起因する産業事故」をトピックスとして取り上げましたが、自然災害が発端となって起きる産業事故はNatech(ナテック:Natural-Hazard triggered Technological Accidents)と呼ばれています。

ここでは、今年RISCAD(リレーショナル化学災害データベース)に登録された「Natech」に相当する事例を振り返ってみたい思います。

2018年に起きた自然災害に起因する産業事故「Natech」

まず、今年激甚災害に指定された自然災害を見てみましょう。(出典:内閣府 防災情報のページ

災害名 主な被災地
①平成30年5月20日から7月10日までの間の豪雨及び暴風雨による災害
(台風第5号、第6号、第7号及び第8号並びに平成30年7月豪雨など梅雨前線
等による一連の災害)
岡山県
広島県
愛媛県
②平成30年8月20日から9月5日までの間の暴風雨及び豪雨による新潟県岩船郡
粟島浦村等の区域に係る災害
(台風第19号、第20号及び第21号等による一連の災害)
和歌山県
奈良県
大阪府
長野県
新潟県
③平成30年北海道胆振東部地震による災害
(平成30年北海道胆振東部地震)
北海道
④平成30年9月28日から10月1日までの間の暴風雨による災害
(台風第24号による災害)
鳥取県
宮崎県
鹿児島県

では、上の激甚災害の一覧と照らし合わせて、RISCADに登録された「Natech」に相当する事例をみてみましょう。

①に関連する事例
2018/07/06 岡山・豪雨の影響でLPガスボンベが流出
2018/07/09 岡山・豪雨による浸水でアルミニウム工場の溶解炉で水蒸気爆発

②に関連する事例
2018/09/04 兵庫・台風の高潮で浸水した自動車から火災
2018/09/05 兵庫・台風の高潮で浸水したコンテナでマグネシウム火災
2018/09/06 福井・繊維工場で機械の試運転中に火災

③に関連する事例
2018/09/06 北海道・地震による停電で製鉄所の製鋼工場で火災

④に関連する事例
2018/10/02 千葉ほか・台風による塩害で停電

このようにRISCADに登録された「Natech」に相当する事例は、全て今年激甚災害に指定された自然災害が発端となっていることがわかります。

過去のRISCAD CloseUPでは、これらの事故に絡むトッピックスを3本掲載しています。

*「Natech」の概要
自然災害に起因する産業事故【注目の化学災害ニュース】2018年9月のニュースから RISCAD CloseUP
*「兵庫・台風の高潮で浸水したコンテナでマグネシウム火災」に関連する記事
水で発熱、発火する物質【注目の化学災害ニュース】2018年10月のニュースから RISCAD CloseUP
*「千葉ほか・台風による塩害で停電」に関連する記事
台風による塩害【注目の化学災害ニュース】2018年10月のニュースから RISCAD CloseUP

米国での「Natech」

もちろん、異常気象は日本に限ったことではなく、全世界規模です。

昨年の事例となりますが、米国を襲ったハリケーンによる化学工場での「Natech」としてはこちらが記憶に新しいところです。

2017/08/31 米国・化学工場で洪水により冷却用電源が喪失して化学物質が爆発

こちらの事故ついては、当サイト内の「さんぽコラム:産業を識る、保安を語る」の人気コーナー、中島農夫男氏による「のぶさんのさんぽ道」でも連載中です。
「化学工場の自然災害(洪水リスク)ガイダンスと規制(その1)」

【編集後記】

自然災害が確実に多くなっている現代、産業界も「Natech」を視野に入れた運営を考えなければいけない時代になってきているようです。備えあれば憂いなし、想定外が想定外ではなくなる場合への備えを早急にする必要がありそうです。

さんぽニュース編集員 伊藤貴子