RISCAD Update 2019年3月第3週【週刊化学災害ニュース】

2019/03/15 12:00 - 2019/03/22 12:00時点までのニュースファイルをお送りいたします。

投稿日:2019年03月27日 10時00分

*2019/03/15発生の、岐阜・自動車用電子部品工場で火災
:工場の敷地内には2棟の工場があり、そのうち、自動車のハンドル周りの電子部品を製造している工場から出火した

*2019/03/16発生の、佐賀・橋梁建設現場で溶接作業中に足場の火災
:溶接作業で出た火花が木製の足場などに飛んで着火した可能性

*2019/03/16発生の、岡山・自動車部品工場の接着剤塗布ラインで点検、清掃中に火災
:接着剤塗布ラインの設備の一部と、工場の天井やダクトの一部が焼けた

*2019/03/17発生の、米国・日本企業子会社の製油所の化学物質タンクで火災
:火災の影響でベンゼンが漏洩し、それを吸い込んだ住民ら約700名が吐気や頭痛で軽症、15名が呼吸困難で重症となった

*2019/03/18発生の、岐阜・ロープウェイのゴンドラ内で害獣よけスプレー缶が破裂
:乗客が携帯していた害獣よけスプレーが気圧の変化により破裂した可能性

*2019/03/21発生の、エジプト・化学肥料工場でタンクの試験中に爆発
:タンク内にはアンモニアが貯蔵されており、化学肥料や化学薬品の原料として使用されていた

昨年は自然災害の多い年でした。その自然災害が発端となって起きる産業事故は、『Natech (ナテック:Natural-Hazard triggered Technological Accidents)』として「さんぽのひろば」でも取り上げてきました。

昨年7月の西日本豪雨による「Natech」で被災した、自動車向け熱間鍛造部品を製造する鉄工所についての情報が入ってきました。

川沿いにあったその鉄工所は、豪雨により浸水し、それによりほとんどの機械が水没して使用不可能となりました。また、川を隔てた位置にあったアルミニウム工場が浸水して、アルミニウム溶解炉で水蒸気爆発が起き、その爆風などの影響で、鉄工所は敷地内にあった計8棟の工場棟などの屋根(スレート葺き)が飛ばされたり、破損するといった被害を受けました。

やむを得ない操業停止から約8ヶ月、その間、浸水した機械の泥を落とすところからはじめ、機械を修理し、6本あった鍛造工場のラインのうち、1本の稼働にこぎつけ、3/25に一部操業を再開したとのことです。工場棟も被害があった8棟中6棟が被災前の状態にほぼ戻ったとのことですが、本格稼働にはまだまだ時間がかかるとのことです。

一方、水蒸気爆発の起きたアルミニウム工場ですが、こちらは親会社が被害者らに損害賠償を行ったものの、周辺住民らに操業再開の理解を得ることは難しいとの経営判断により、同事業の再建は断念されたとのことです。

できることならば起きて欲しくない自然災害。桜の開花の声が聞こえてきましたが、ということは台風シーズンもそれだけ近づいてきたということでもあります。今年は豪雨や、もちろん季節を問わずやってくる地震などもないことを祈ります。

【参考記事】
自然災害に起因する産業事故「Natech」【週刊化学災害ニュースまとめ】2018年のニュースから RISCAD LookBack
自然災害に起因する産業事故【注目の化学災害ニュース】2018年9月のニュースから RISCAD CloseUP
水で発熱、発火する物質【注目の化学災害ニュース】2018年10月のニュースから RISCAD CloseUP
さんぽコラム「のぶさんのさんぽ道」
  化学工場の自然災害(洪水リスク)ガイダンスと規制(その1)
  化学工場の自然災害(洪水リスク)ガイダンスと規制(その2)

さんぽニュース編集員 伊藤貴子