投稿日:2022年12月01日 10時00分
12月に入り、早いもので2022年も残すところあと1ヶ月となりました。去年の今頃にもこのコーナーの冒頭で同じようなことを書いていたわけですが、あっという間に時が過ぎ、「今年も残すところあと1ヶ月」とまたここに書いているのです。歳を重ねるごとに1年の経過が速くなっていくように感じると言いますが、個人的にはまさにそれを実感する昨今であります。
さて、先月もお話ししたように、寒い時期のこのコーナーで取り上げる題材は、火災への注意、暖房器具関連の注意、鍋の季節であることからカセットこんろの使用に関する注意(換気不足による一酸化炭素中毒を含む)などに偏りがちです。今回も火災関連の内容となりますが、起きないに越したことがない火災について、もし起きてしまったらどうすればよいのか、公的機関の資料などをもとに紹介していきたいと思います。それではRISCAD CloseUP「もし火災が起きたら−知っておきたい3ステップ−」、スタートです。
住宅での火災原因は?
寒くなるとともに、空気の乾燥や暖房器具の使用などが影響してか、私たちの住居である住宅などの火災のニュースを多く聞くようになってきました。最悪の場合には命を落とすことがある火災。命が助かったとしても家屋敷などの大きな財産を失くすことがある恐ろしい災害です。
さて、その住宅などの火災ですが、原因はどのようなことが多いのでしょうか。
総務省消防庁発行の
令和3年版消防白書 第1節 火災予防から、
「住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者を除く。)」の図を以下に引用いたします。
(備考)「火災報告」により作成
住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者を除く。)
(総務省消防庁 令和3年版消防白書 第1節 火災予防 第1-1-11図 住宅火災の発火源別死者数(放火自殺者を除く。)より引用)
図からわかるように、死者が出た火災の発火源として最も多いのがたばこです。そして、電気器具、ストーブ、こんろ、マッチ・ライターなどが並びます。
健康意識の高まりにより喫煙者数は減少傾向にあると耳にしているので、たばこが最も多い発火源であることには驚かされますが、嗜好品とはいえ火がついたものを人間の手で扱うのには変わりがないので、何かの間違いがあれば周囲の可燃物に着火する可能性が高いということでしょうか。また、タバコの次に多いのが、直接火を使わない電気器具を発火元とする火災であることも注目したい点です。
もし火災が起きたら
さて、冒頭でも述べましたが、火災は、最悪の場合には命を落とすことがあり、もし命が助かったとしても、家屋敷などの大きな財産を失くすことがある災害です。いずれにしてもその後の人生に大きな影響を与える可能性があり、起きない、起こさないに越したことはないものです。
しかし、「不慮の事故」という言葉があるように、起きてほしくないと思い注意していても、予測不能な不可抗力により火災が起きる可能性があります。また、ついうっかりのミスから火災が起きてしまうこともあるかもしれません。
「火災予防」に越したことはありませんが、万が一火災が起きた際にはどうすれば良いのかを知っておくのもとても大事なことです。ご存知の方も多い内容であるかとは思いますが、おさらいの意味をこめて、再確認してみましょう。
通報(周知)・初期消火・避難の3ステップ
ステップ1.通報(周知)
火災の発生に気づいたら、まず
周囲に知らせ、消防に通報しましょう。
・「火事です!」と大声で叫ぶなどして周囲に知らせる
避難を促したり、通報や消火活動に協力してもらったりするために、周辺住人などに火災の発生を知らせる
・非常ベルを鳴らす
非常ベルを鳴らして各階住人などに火災の発生を知らせる(主に集合住宅など)
・消防に通報(119番)
通報時の応答例
1.はじめに「火災」か「救急」かを聞かれるので、「火災」であると伝える
2.火災の発生場所を正確に伝える
(例:住所、特に携帯電話での通報の場合には正確な位置情報を伝える)
3.建物の名称や近くのわかりやすい目印などを伝える
(例:○○アパートの2階の201号室です、○○スーパーの向かいです など)
4.何が燃えているのかを具体的に伝える
(例:天ぷら油から火が出ました、ストーブの周りが燃えています など)
ステップ2.初期消火
次に、無理のない範囲で初期消火を行います。
初期消火というと思い浮かぶのはやはり消火器でしょうか。注意したい点は、燃えているものによって消火方法が変わる場合があるということです。逆効果となる消火方法を選び、やけどやけがをしないようにしましょう。
そして特に以下の火災の初期消火の際には注意すべきことがあります。
・天ぷら油などの油の火災の初期消火で水をかけるのは厳禁!!
加熱した油に水が触れると、油が周囲に飛散し、火炎が広がる可能性があります。また、飛散した油が身体にかかるなどしてやけどを負う可能性があります。
油火災に適した消火器がない場合
・シーツなどを濡らして軽くしぼり、鍋全体を覆うようにかぶせる
・手前から火を押さえ込むように鍋に蓋をする
(消えたと思っても蓋を開けずそのままにしておく)
注意すべき点など:調理器具を消す
ガスこんろなどの場合、ガスの元栓を閉める
やけどに十分注意する
・電気器具などの火災の初期消火は電気を遮断してから行う
感電を防ぐため、コンセントからプラグを抜き、ブレーカーをOFFにして、必ず電気を遮断した状態で消火を行う。
電気火災に適した消火器がない場合
・水での消火も可能だが、必ず電気を遮断した状態で行う
注意すべき点など:感電事故を防ぐために、確実に電気を遮断する
初期消火で火災を食い止めることができるのは、
天井に火が回る前までとされているそうです。それを過ぎたら、火の勢いがおさまらなくても初期消火をやめる判断をして、避難しましょう。もちろん、その前でも身の危険を感じたら
避難することが最優先です。
ステップ3.避難
初期消火では手に負えないと判断したら、
身の安全を確保しながら避難をします。
避難の際、可能であれば火元の部屋のドアや窓を閉め、空気を遮断しておくと延焼を防ぐ助けになるそうです。とはいえ、人命最優先です。無理のない範囲で行うこととして覚えておきたい事項であり、まずは命を守る行動を優先しましょう。
避難の際のポイントとしては、以下のようなことがあげられます。
・服装や持ち物にこだわらず、姿勢を低くし、ハンカチやタオルなどで口・鼻をおおい、
早く逃げる
・一度逃げ出したら、絶対に戻らない
・エレベーターがあっても絶対使用しない
・できるだけ、建物外や下階に避難する
・出入口が炎でふさがれ、避難経路が一つしかないと判断し、命の危険を感じた場合には、
少々無理をしてでも避難を試みる
(大阪市 消防局 「火災における避難方法」より引用)
まとめ
さて、「もし火災が起きたら」ということで、「通報(周知)・初期消火・避難」の3ステップに分けて考えてきましたが、いかがでしたでしょうか。
どんな災害でも、パターン通りに起きるものはありません。そして災害に遭遇しても一番大事なのは私たちの命であるということに変わりはないかと思います。火災という災害からの避難であれば、予測不可能な火炎の燃え広がりや煙の充満などを避けながら、命を守るべく最善の行動を選び逃げ、生き延びるものであると考えます。そのためにも、日頃から基礎的な知識を蓄えておくことは大切だと思うのです。
【参考情報】
【参考記事】
さんぽニュース編集員 伊藤貴子