2023年の事故を振り返る【週刊化学災害ニュースまとめ】 RISCAD LookBack

投稿日:2023年12月21日 10時00分

年の瀬も押し迫ってまいりました。みなさんにとってこの2023年はどのような年であったでしょうか。12/12には毎年恒例のその年1年の世相を漢字ひと文字で表す「今年の漢字」(日本漢字能力検定協会主催、一般公募による選出)が発表になりました。今年の漢字は「税」とのこと。応募した方の数だけ、その字に込める思いなどがあると思いますが、振り返ってみると確かに増税やら減税やらという言葉が矢鱈耳に入る年であったという印象があります。
ちなみに2位は「暑」であったとのこと。今年の(今年「も」、かもしれませんが)暑い夏、そして師走の声を聞いてもまだ20℃を超える日があるというこの暖かさから、私はこの「暑」か「暖」あたりが「今年の漢字」になるのではないかと密かに予想していたのですが、はずれました。
「今年の漢字」は、先に触れたように一般公募により決まるとのこと。年末のこの記事の冒頭でよく「今年の漢字」に触れる私ですが、来年は実際に私が実感した漢字を応募してみようかと、鬼が笑いそうなことを考えてみたりするのでした。

さて、前置きが長くなりましたが、ここからは私たち「さんぽのひろば」がウオッチしてきた、2023年に日本国内で起きた事故について、「2023年の事故を振り返る」」と題し、その事故事例をピックアップしてみたいと思います。

バーベキューで燃焼促進にエタノールを使用したことによる火災

専門学校主催のバーベキューで、炭火の燃焼促進にエタノールを使用したことにより火災が発生し、学生1名が亡くなるという痛ましい事故が起きました。

2023/5/24 福岡・専門学校でバーベキューに消毒用エタノールを使用して火災
専門学校の敷地内でドラム缶を使用してバーベキュー中に火災が起きた。学校が消防に通報した。衣服などに着火してやけどを負った学生4名が病院に搬送され、うち1名が全身やけどで重傷となった。同学生は13日後に死亡した。警察と消防の調べでは、燃料には炭が使用され、着火剤を使用していたが、燃焼を促進するために手指消毒用のエタノールが混ぜられていた。使用していたドラム缶12台のうち1台の火が消えたため、教員が消毒用エタノールを追加したことで激しく燃焼した可能性がある。同バーベキューは1学期終了の打上げで、同校の学生ら約500名が参加していた。同校では毎年4-5回バーベキューを開催していた。

エタノールは縦約20cm、横約30cm、幅約10cmの樹脂製タンクのような容器に入っており、ドラム缶12台の炭に着火する際、教員らが着火剤や新聞紙に消毒用エタノールを染込ませたところにライターで着火したとのこと。その後、うちドラム缶1台の火が消えたため、火勢を強めるためにエタノールを追加したことで激しい燃焼に至ったとのことです。

学校の上層部、教員らが出席していたバーベキューにおいて、消毒用エタノールを炭への着火の促進に使用することが大事故につながるかもしれないと考えなかった、またはそう思っていても言えなかったなどの風潮があったとすれば、組織の安全風土に何かの問題があった可能性があります。

亡くなられた学生のご冥福を心よりお祈りいたします。


 【参考記事】
   ・消毒用エチルアルコールを取り扱う時に注意すべきこと【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP
   ・エタノールの特性と分類−消毒用エタノールは引火性液体−【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP
   ・私たちは消毒用エタノールの扱いに慣れたのか? その1【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP
   ・私たちは消毒用エタノールの扱いに慣れたのか? その2【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

同一のバイオマス発電所での複数回の事故

鳥取のバイオマス発電所で、5月に2回の火災が起きました。また、この発電所では9月に爆発、火災が起きました。

2023/5/17 鳥取・バイオマス発電所で燃料タンク内の木材チップの火災
バイオマス発電所の高さ約30m、直径約23mのコンクリート製の燃料タンクで木材チップの火災が起きた。同発電所の従業員が消防に通報した。消防が約30分後に消火したが、同タンク内の一部と木材チップ約2平方mが焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同発電所は木材チップやパーム椰子殻などのバイオマスを燃料として発電を行っており、4基あるタンクのうち1基のタンク内に貯蔵していた燃料の木材チップから自然発火した可能性がある

2023/9/9 鳥取・バイオマス発電所の燃料受入建屋で爆発、火災
バイオマス発電所の鉄骨造平屋建ての燃料受入建屋で爆発、火災が起きた。隣接する会社の従業員が消防に通報した。消防が約4時間後に鎮火したが、同建屋の屋根や壁の一部が吹飛んで約135平方mが焼け、エレベータ約75平方mが焼けた。けが人はなかった。警察と消防の調べでは、同建屋では発電の燃料として使用する木質ペレットを保管しており、焼損したエレベータは木質ペレットを貯留槽に運搬するために使用されていた。

「さんぽのひろば」では情報をつかめていませんが、2023/5には上記事例のほかにもう1件火災が発生したとのこと。事故が発生したのはそれぞれ別の場所であり、因果関係はないとされていますが、この発電所では今年3件の事故が発生したということになります。

9月の事故は爆発を伴うもので、原因究明等のため現在も同発電所は稼働停止中です。先日、発電所が国に対し、外部の専門家による調査の途中経過を報告しました。

調査によれば、爆発は短時間に連続して発生した可能性があるとのこと。そのうち最初の爆発の原因は判明しておらず、引き続き調査中とのことすが、2回目の爆発については、最初の爆発により飛散した木質ペレットなどの粉塵に着火したことで起きた大規模な粉塵爆発である可能性が高いとのことです。

発電所は引き続き事故の原因究明を進め、再発防止対策を講じていくとのことです。


 【参考記事】
   事故と組織のイメージ【注目の化学災害ニュース】RISCAD CloseUP

ロケット実験施設での燃焼試験中の爆発事故

2023/9にH-IIAロケットの打上げに成功しましたが、2022/10にイプシロンロケット、2023/3のH3ロケットの打上げが失敗*したというイメージが残る日本の航空宇宙分野。そのような中で起きた、秋田のロケット実験施設での燃焼試験中の爆発事故は衝撃的でした。

2023/7/14 秋田・ロケット実験施設でエンジンの燃焼試験中に爆発、火災
宇宙航空関連研究機関のロケット実験施設の真空燃焼試験棟で固体燃料ロケット用のエンジンの地上燃焼試験中に爆発、火災が起きた。消防車など11台が約2時間後に鎮火したが、同試験棟が激しく破損して焼け、周囲の建物のガラス窓が割れるなどの被害が出た。職員や作業員などは実験前に退避しており、けが人はなかった。同研究機関の調べでは、燃焼試験は燃料を119秒間燃焼する予定で行われたが、何かの原因で点火後57秒で圧力が開放された。エンジンを覆う圧力容器や燃料に何かの不具合があった可能性がある。

事故についてはその後調査が進められ、先日、爆発の原因が特定されました。

エンジンに点火した後、何かの理由で点火装置の金属部品に想定を超える熱が加わり、金属部品の一部が熔融して飛散し、その飛散物がエンジンを覆う圧力容器とそれを燃料の熱から守る断熱材の隙間に入ったことにより、断熱材が損傷したとのことです。そして燃料に着火後、断熱材が損傷していたことで、圧力容器が許容温度を超える高温にさらされて爆発に至ったと考えられるとのことです。

爆発が起きた真空燃焼試験棟は、損傷が激しいため修理は不可能で、今年度内に建物を解体、撤去する方針とのことです。

なお、はじめに触れたように、この事故の約2ヶ月後の2023/9にはH-IIAロケットの打上げが成功し、そのロケットから分離された小型月着陸実証機は、2024/1/20に月面に着陸予定**とのことです。

 【参考情報】
  JAXA
   *打上げ実績(2003年10月~)
   **2023年(令和5年)12月理事長定例記者会見

【編集後記】

事故は起きないに越したことはありません。しかし、日々色々な事故が起きているのが現状です。「さんぽのひろば」では、起きてしまった事故の情報を共有することで、どのような時に、どのようなことがきっかけで事故が起きるのか、また、事故が起きやすい場所、どこに気をつけておくべきかなどの知識を得るきっかけを作り、微力ながら事故の発生を少しでも減らすお手伝いができればと考え、今後も地道に活動を続けていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

今年もご愛読ありがとうございました。読者のみなさまの安全な2024年を心よりお祈りいたします。

 

さんぽニュース編集員 伊藤貴子