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    安全科学研究部門長 玄地 裕

     2021年4月1日付けで安全科学研究部門の部門長を拝命いたしました。安全科学研究部門は2008年4月の発足ですから、本年度で14年目を迎え、私で部門長は5代目となります。その間、リーマンショック、東日本大震災、コロナ禍など国内外で大きな変化がありました。安全科学が関係するエネルギー・環境の分野では、特に2015年にパリ協定、SDGsが国際的な共通目標となってから、気候変動を中心に環境を取り巻く世界的な潮流が大きく変化しています。
    産業界にとって環境対応は利益を生まないと見なされてきましたが、今は環境対応を積極的に発信することにより、企業価値が向上するポジティブインパクトとしての認識が広まっています。金融業界も国連主導で2019年に発足した責任銀行原則により、気候変動のリスク管理とポジティブインパクト増加への貢献を打ち出しました。国内では2020年10月には、「2050年カーボンニュートラル」が菅首相によって表明され、温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすることが日本の大きな目標となりました。
     安全科学研究部門の所属する産総研エネルギー・環境領域では新規材料創製、高性能デバイス開発、システム化研究、評価手法開発等に資する各要素技術に長期的な視野で取り組むことで、極めて高いハードルであるゼロエミッション社会に必達するための革新的な技術シーズ開発を実施しています。 私たちは現在、「安全な社会を支えるリスク評価研究」と「技術の社会実装を支援する評価研究」という二つの重点課題を設定し、SDGsなど社会の持続可能性への関心から、世界のバリューチェーンに関わるリスク管理ニーズの急速な高まりや、社会実装に際して、イノベーティブな技術の利用による影響を多面的に俯瞰した科学的根拠の提示といったニーズに応える評価手法開発を中心とした研究開発を行っています。 持続可能な社会の構築の実現にむけて、ステークホルダーに向けたガイドラインがいくつか出ていますが、その中で共通して強調されていることはライフサイクルの視点と科学的・論理的なリスクの検証や評価の必要性です。安全科学研究部門は、2008年の設立以来、フィジカルハザード、化学物質リスク評価、ライフサイクル評価などの評価技術を研究の基盤として、安全で持続性の高い社会の構築への貢献を目指して研究開発を行ってきました。私たちは基盤の充実を行いながら、行政、産業界、大学、研究所、市民といった幅広いステークホルダーの科学的評価の社会的ニーズに応え、評価から未来に向けた社会実装への道をつなぐ研究で、安全で持続性の高い社会の構築に貢献していく所存です。

    安全科学研究部門長
    玄地 裕