社会とLCA研究グループ
社会とLCA研究グループ

研究職員:4名
櫻井 啓一郎 Chun Yoon-Young 小島 直也
契約職員等:4名
概要
社会の変化に伴って導入された新しい技術がもたらす可能性のある問題について、リスク評価およびライフサイクルアセスメント(LCA)を実施し、持続可能な社会の実現に向けた社会制度設計の支援につながる研究を行っています。特に化学物質に関して、製品のライフサイクル全体を考慮したリスク評価・リスクトレードオフ解析、災害や事故のリスク評価に関する技術開発に取り組んでいます。また、社会経済への影響や波及効果を分析するための評価手法を開発し、社会受容性の調査・分析を行っています。カーボンニュートラルおよびエネルギー関連技術、窒素循環技術、海洋生分解プラスチックの導入など、幅広い対象を扱っています。
研究内容
エネルギー技術普及加速方策の検討
低炭素化を進めて持続的な社会に変えていくには、建造物の断熱、再生可能エネルギー、電気自動車等の技術そのものの開発のみならず、それらをなるべくスムーズにかつ速やかに普及させる方策も大切です。科学的な裏付けのある情報の共有、人材育成、融資の確保、地域の産業構成や風土との適合等に配慮しながら普及を進め、便益を最大化するための研究を進めています。
![]() |
図 2050年時点までの世界の太陽光発電の導入ペースの目安
(N.M. Haegel et al., Science 380, Issue 6640, pp. 39-42, 6 Apr 2023)
今後10年間で年間導入設備量を10倍程度まで拡大させることで、持続的な社会において必要と想定される規模の導入設備量(この例では2050年時点で75TW)に達します。これまでの実績と今後の見通しからは、この目標は達成可能と示唆されます。
放射能廃棄物を活用したエネルギーハーベスティング技術に対する社会的受容性分析
放射性廃棄物からのエネルギー収穫技術は、革新的で持続可能なエネルギーソリューションになり得ます。しかし、放射能廃棄物やその活用技術に対する大衆の否定的認識と低い収容度は、該当技術を実現するための障壁となっています。本研究は放射性廃棄物によるエネルギー収穫技術に対する大衆の受容性、態度、認識を理解し分析するモデルの構築を目的としています。
![]() |
放射能廃棄物を活用したエネルギー収穫技術への受容意向分析モデル
災害・事故のリスク評価
災害・事故に対する化学物質リスク評価・管理手法の開発
災害や事故による事業所等からの非定常の化学物質排出について、迅速な影響予測のための手法を開発し、化学物質管理の枠組みへの実装をめざします。大気・水域での拡散による汚染状況の予測手法を確立し、予測結果を早見表にまとめた事例集等、事前の対策検討が可能になる情報を提供します。
![]() 非定常排出時における重ガス (アンモニアの例) |
早見表イメージ(トルエン漏洩事故を想定) |
工学プラントの定量的リスク評価
水素ステーション、アンモニア大量貯蔵設備等、様々なプラントを対象に、災害・事故のリスクを定量しリスク許容基準と比較することで、リスクベースでの合理的な安全管理の社会実装をめざします。
![]() |
一般的なリスク許容基準と水素ステーションのリスク
リスク/リスクトレードオフの統合評価
複数なリスク/基準/ステークホルダーの統合評価
- ライフサイクル思考に基づくリスク/リスクトレードオフ評価手法開発を行っています。
- 多様な基準や複数のステークホルダーに対応するための新しい統合評価手法開発を行っています。
- エネルギー・環境に関する窒素循環技術/エネルギーキャリア技術/バイオマス利活用技術への適用をめざし、科学的な意思決定を支援します。
![]() |
統合評価の枠組み
研究紹介