インベントリデータベースIDEAを利用した物量連関表・経済連関表の開発
塚原 建一郎(社会とLCA研究グループ)
【背景・経緯】
新規技術(システム)が社会に実装される際には、環境・経済・社会への影響を考慮した上で、持続可能であることが必要ですが、それだけでなく、普及した場合における、人間の生活行動の変化やそれに伴う産業構造の変化など、社会全体に波及的に生じる間接的な影響まで、動的かつ包括的に評価することが求められています。IDEA(Inventory Database for Environmental Analysis)には、単位重量やエネルギーあたりの入出力が記述されているユニットプロセスデータが網羅的に搭載されているため、サプライチェーンの可視化に活用することが可能です。そこで、国内で生産される製品・サービス間の物量および金額フローを分析できるデータベース(物量連関表・経済連関表)の構築を試みました。
【成果】
IDEAにおいて網羅性が担保できる約 2,000品目のユニットプロセスデータを、「縦軸に入力」、「横軸に製品」として並べ替えたもの(投入係数行列)に、各製品の年間生産量を乗じ、最終需要量(含輸出量)や輸入量の情報を加えることにより、1年間で生産・販売された製品がどのように作られ、何に使われているかを一覧できる物量連関表を作成しました。また、サービスの多くは固有の数量単位を持たず、投入される原材料などの種類により計測単位も異なることから、金額を共通の尺度として生産活動の大きさを評価することができるように、物量連関表に各製品・サービスごとの単価を乗じ、粗付加価値の情報を加えて、経済連関表を作成しました。さらに、逆行列係数を用いることで、サプライチェーンを通して波及的に必要となる素材・部品、エネルギー等の需要量の定量化が可能となりました。
物量連関表・経済連関表の作成方法
【成果の意義・今後の展開】
物量連関表および経済連関表は、国内で生産される製品・サービス間の連鎖構造を把握できるデータベースであり、社会システム全体の評価への活用が期待されます。今後は、データの精度を高めるとともに、ケーススタディを通じて、直接・間接影響の要因、重要な影響領域の抽出などの検討を進め、導入にあたりトレードオフが生じた場合にも、解決の方向性について提示できるようにすることを目指しています。
2022年02月09日