東南アジア向けカーシェアリングサービスの消費者受容性モデル
CHUN YOON-YOUNG(社会とLCA研究グループ )
【背景・経緯】
自動車依存度の上昇は大気汚染、温室効果ガス(GHG)の排出、交通渋滞、事故、公衆衛生問題などの環境社会問題にもつながります。自動車への依存度を下げながら、効率的かつ持続可能な輸送手段を提供することは、特に都市人口及び経済発展が急速に増加している途上国にとって大きな課題です。カーシェアリングはユーザーが時間単位または日単位で自動車を借りることができるモデルで、効率的かつ持続可能な代替交通手段の一つとして注目されています。カーシェアリングがまだ導入されていないもしくは、広く使われていない開発途上国における消費者の利用行動を理解するため、カーシェアリング受容性モデルの開発を行いました。
【2019年度の取組みと成果】
影響力のある要因とカーシェアリングサービスを利用する消費者の意図との相関性を明らかにするカーシェアリング受容性モデルを開発し、インドネシアの消費者向けに試行しました。その結果、インドネシアの消費者のカーシェアリング利用の意向に影響を与える潜在的な(心理社会的および人口統計学的)要因を明らかにしました。例えば、インドネシアの消費者はカーシェアリングの利点(特に、利便性・コスト削減)を大きく認識するほど、また所得が相対的に高いほどカーシェアリングサービスを利用する可能性が高いことが分かりました。一方、消費者が自動車に対する社会的なステイタス価値、あるいは嗜好的価値を感じるときにカーシェアリングの利用意向に否定的に作用します。これらの結果をSustainability 2019, 11(18), 5103 で論文発表するとともに、EcoDesign 2019 (11th International Symposium on Environmentally Conscious Design and Inverse Manufacturing)で口頭発表しました。
【成果の意義・今後の展開】
この研究により、インドネシアのような東南アジア地域では、カーシェアリングの需要があることを確認でき、研究を通じて明らかになった影響要因はインドネシア市場にカーシェアリングサービスを進めようとする都市交通計画者や事業主にとって有益な指針となることが期待されます。今後は、カーシェアリングモデルが東南アジア地域に導入される場合の、GHG排出削減への影響を算定する予定です。
※ 本課題は、独立行政法人環境再生保全機構環境研究開発基金(S16)の支援で行われました。
図 インドネシア向けカーシェアリング受容性モデル
2020年07月15日