インベントリデータベースIDEAv2.3リリースと海外版の構築
田原聖隆(安全科学研究部門)
【背景・経緯】
2015年に採択されたSDGsやパリ協定など国際社会での持続可能性への対応の要望は、国、地方自治体、産業、企業、消費者などあらゆるレベルで強くなっています。そのような中、持続可能性の基礎となる新技術・製品の環境適合性の分析にはLCAが不可欠となっています。我々は、以前よりLCAの実施基盤となるインベントリデータベースの開発を実施しており、2010年に経済産業省カーボンフットプリント事業に対応し、網羅性を担保したIDEA v1を公開しました。2016年には、温暖化を含む多様な環境問題への影響定量化の要望に応え、土地利用、水資源消費にも対応したインベントリデータベース(IDEA v2)を公開しています。
【2019年度の取組みと成果】
IDEAは、日本における製造プロセスを網羅した圧倒的なデータ数を誇るデータベースとして、維持管理されています。2019年度には、化学物質の排出を充実させ、金属製品のインベントリやサービス部門の拡充を行ったIDEAv2.3へのアップデートを実施しました。続いて、IDEAv3開発に向けて統計データの収集・分析を開始しました。また、グローバルなサプライチェーンに対応するために、中国、台湾、韓国、タイ、マレーシア、インドネシア、ベトナム、トルコ、仏国、英国、米国、ブラジルの12カ国に対して、IDEA(日本版)の値をベースとし、エネルギー関連データに各国の状況を反映させたIDEA海外版を構築しました。加えて、IDEAの産業界等での活用拡大、パリ協定、TCFD等でのGHG排出量の見える化の要請に応えるべく、持続可能なデータベース開発を目的としたLCA活用推進コンソーシアムの2020年度設立に向けた準備を行いました。
【成果の意義・今後の展開】
IDEAの開発・維持の継続は、LCAの普及に繋がります。LCAが広く適切に活用されることで、信頼性の高いGHG排出量の開示が可能となり、日本企業の競争力強化を図ることも期待されます。今後は、将来の技術評価を可能とするように時間的拡張を行ったIDEAの構築や、グローバルサプライチェーンに対応したIDEAグリーバル構築(空間的拡張)を研究課題として、より広範に、より緻密に環境負荷分析が可能となるデータベースを開発します。
図 IDEAのデータセット数(ecoinventは欧州で一番利用されているデータベース)
2020年07月15日