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  • 燃料アンモニア利用機器における漏洩確率の推計
  • 燃料アンモニア利用機器における漏洩確率の推計

    小島直也(社会とLCA研究グループ)

    • 小野恭子(社会とLCA研究グループ)
    • 加藤悦子(社会とLCA研究グループ)
    • 吉田愛(社会とLCA研究グループ)

    【背景・経緯】
    アンモニアはこれまで化学品や肥料の原料、冷媒として用いられてきた物質であり、近年では燃焼時にCO2を排出しない性質から、石油代替燃料の一つとして期待されており、発電用や船舶用の燃料として利用するための研究開発が進められています。
    一方でアンモニアには危険性もあります。例えば、劇物に指定されているため、法令で定められた方法で適切に管理される必要があります。しかし、適切に管理されていたとしても、使用に伴う機器・設備の経年劣化や人為的ミスは0にはできないことから、低確率であるとはいえ、漏洩事故の発生は避けられません。この前提に立って、どのような規模の事故が、どの程度の確率で生じるかを定量的に把握する研究を進めています。

     

    【成果】
    現在のところ、アンモニアは燃料としての利用実績に乏しいため、少数の事故事例から燃料漏洩確率を直接推定したとしても、信頼できる漏洩確率が得られません。諸外国の先行調査・研究では、主にLNG(液体天然ガス)燃料を利用する施設・機器で発生した事故データを元にして、燃料アンモニアの漏洩確率を推定推定しています。ここには、アンモニアに関する事故の特徴が十分に反映されていないという課題があります。
    そこで、まず我々は、日本における化学工程や冷却工程(≠燃料利用)で発生した事故データを収集・整理し、漏洩規模別のアンモニア漏洩確率(件/年)を算出しました。次に、諸外国における既存の燃料漏洩確率(事前確率)に、我々の算定したアンモニア漏洩確率を「ベイズ更新」手法で反映させ、新たな漏洩確率(事後確率)、を推定する方法を提案しました(図)。これによりアンモニアに関する事故特徴を反映した燃料漏洩確率として、今まで以上に信頼性が高くかつ現実的な値が得られることとなります。

     

    図 アンモニア漏洩頻度データを用いたベイズ推論による漏洩確率推定の手順

     

    【成果の意義・今後の展開】
    これまでのアンモニア利用機器の漏洩確率は、LNGといった他の燃料の事故データから推定されていましたが、本手法により、アンモニアの事故の特徴をより反映した漏洩確率が推定できます。
    今後は、今回作成した漏洩確率と、アンモニアを利用する発電施設や船舶における配管長や機器の個数とを、適切に掛け合わせることで、施設全体からの漏洩確率の推定を実施する予定です。これにより、施設全体の安全管理に貢献する知見へつなげていきたいと考えています。

     

    ※この成果の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構の委託業務 JPNP16002 の結果得られたものです。また、本研究の一部は一般財団法人日本海事協会との協業によるものです。

    2024年01月25日