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  • 電気自動車の再製造部品に対する消費者受容性モデル
  • 電気自動車の再製造部品に対する消費者受容性モデル

    Yoon-Young Chun(社会とLCA研究グループ)

    【背景・経緯】
     エネルギー効率の改善と排気ガス等大気汚染物質の減少にもかかわらず、電気自動車(EV)は廃棄物管理問題で持続可能な選択なのかに対する懐疑に直面する場合が多いです。世界的にEVの市場が増加するにつれ、業界は廃棄物管理のために再製造のような循環経済(CE)戦略を採用するよう圧力を受け続けざるを得ないです。再製造とは、再利用、修理、および新規部品の組み合わせを使用して、少なくとも元の製造製品の仕様に製品を再構築する方法で、資源削減と廃棄物削減を可能にする循環経済(Circular Economy)戦略です。過去の類似研究では、再製造部品に対する消費者の受け入れ可否を調査しましたが、消費者を細分化していない場合がほとんどであり、EVに対する事例もほとんどありませんでした。

     

    【成果】
     本研究は、再製造されたEV部品に対する特定グループの消費者、すなわち、新しさを重視しこれを製品の品質と見なすグループ(Newness-Conscious Consumer, NCC)の消費者行動を理解するために、電気自動車の再製造部品に対する消費者受容性モデルを開発し、特に環境にやさしい情報提供による消費者認識の改善が消費者の行動変化に中枢的な役割を果たせるかについて調査しました。より具体的には、環境にやさしい情報提供に関連する様々な要因(例えば、環境的要因: 環境ラベル、再製造製品について消費者が認識している価値や信頼度、一般的要因: 消費者の価格に対する敏感度)と、NCCグループの購入意向との関係を分析しました。
     また、本研究では、NCCグループの半分は再製造に関する情報ビデオを視聴させ、彼らの回答を残りの半分の(ビデオを視聴していない)NCCグループと比較して、再製造の価値と機能を示す信頼できるエコ情報をNCCグループに提供する場合、これらの再製造されたEV部品に対する購入意向が改善できるかを識別しました。これらの結果をSustain. Prod. Consum. 2023, 40, 147-158 で論文を発表しました。

     

    図 再製造されたEV部品に対する日本消費者の受容性モデル

     

    価格に敏感なNCC消費者であるほど、環境(再製造)ラベルに対する認識が高い可能性が高い。 環境ラベルに対する高い認識は、再製造製品に対する価値や信頼度の向上に肯定的な影響を及ぼし、これは再製造されたEV部品に対するNCC消費者の購買意向を改善させる。

     

    【成果の意義・今後の展開】
     この研究により、新しいものを追求し、再製造製品に対して比較的惹かれる可能性が低いNCCグループに対して、再製造されたEV部品に対する購買行動に影響を及ぼしうる要因を明らかにしました。 また、NCCグループに再製造の品質と機能に関する情報を提供することが、再製造されたEV部品に関する認識と意図に影響を及ぼす可能性があることを確認しました。この研究結果は、EV産業に循環経済戦略である再製造を導入する際の洞察を提供することができます。

     

    ※ 本研究はJSPS科研費 JP22K12494の助成を受けたものです。

    2024年01月25日