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  • 複数AIを組合せた革新的実験計画法「Multi-Sigma」による研究開発のDX
  • 複数AIを組合せた革新的実験計画法「Multi-Sigma」による研究開発のDX

    河尻耕太郎(社会とLCAグループ)

    【背景・経緯】

    工学的な研究開発の多くは、複数の目的変数に対して、製造条件や製品デザインなどの多入力変数を最適化するための活動、つまり多入力多目的システムの最適化のための活動といえます。しかしながら、実験を行うのは、コストや時間がかかるため、いかに少ない実験回数で、そのような複雑なシステムを最適化出来るかが、研究開発効率の向上のポイントです。特に近年、温室効果ガスをはじめとする環境負荷削減が求められていますが、実は小規模装置を用いた研究開発は、大規模装置を用いた製品製造よりも、単位生産量あたりの環境負荷が著しく大きいため、研究開発を効率化出来れば、経済と環境の両側面に貢献できます。

     

    【成果】

    現在、様々な研究テーマに対して、従来の実験計画法の枠組みにAIの手法であるニューラルネットワーク解析と遺伝的アルゴリズムを組合せた革新的実験計画法「Multi-Sigma」を適用し、その実用可能性について実証研究を実施しています。革新的実験計画法では、Plan: 実験計画作成→Do: 実験実施→Modeling: ニューラルネットワーク解析→Optimization: 多目的遺伝的アルゴリズムの4つサイクルにより、必要最小限の実験データに基づいて、多入力多目的システムを最適化します。人工心臓(動圧浮上遠心血液ポンプ)の事例では、デザインパラメータとして入力変数が4つ、軸受けスラスト力(最大化)と血液のダメージ値(DI)(最小化)の2つを目的変数として、入力変数を最適化しました。4つの入力変数の組合せの数(7200通り)に対して、約60回(約120分の1)の実験で、2つの目的変数を同時に満たす入力変数の探索に成功しました。さらに、要因分析により、従来は溝の本数が重要だと思われていたのに対し、軸の深さが重要であるという、新しい知見も発見できました。

     

     

    図.Multi-Sigmaによる人工心臓のデザイン最適化

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本手法は、様々な研究テーマに対して適用可能です。人間の試行錯誤をDX化することで、研究開発を大幅に効率化し、労力やコスト、さらには環境負荷の低減に貢献出来ます。また、AIならではの新たな知見や最適解の探索にも貢献できます。なお、革新的実験計画法のAI解析の部分は、エイゾス社によるAI解析ウェブアプリ「Multi-Sigma」※を用いることで、プログラミングをすることなく、誰でも、どこでも、どのようなハードウェア上でも実施できる環境が整いつつあります。

     

    https://multi-sigma.aizoth.com/

    2021年09月16日