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  • ハイブリッド海洋温度差発電(Hybrid ocean thermal energy conversion、H-OTEC)システムの建設に関するLCA研究
  • ハイブリッド海洋温度差発電(Hybrid ocean thermal energy conversion、H-OTEC)システムの建設に関するLCA研究

    Yoon-Young Chun(社会とLCA研究グループ)

    • 高田亜佐子(社会とLCA研究グループ)
    • 田原聖隆(安全科学研究部門)

    【背景・経緯】
     ハイブリッドOTEC(H-OTEC)は、海面と水深の温度差を利用して発電するシステムと淡水化を統合したシステムで、電力と海水蒸留水を同時に生産することができます。当該システムはエネルギー供給源が無限であり、また二酸化炭素を発生させない清浄自然エネルギーです。しかし、巨大な長さのパイプラインをはじめとする大型発電設備が必要であり、資源消耗が多いです。2019年、日本とマレーシアの共同プロジェクトとして世界初のH-OTECモデルプラントである海水淡水化設備を備えた3kW級発電所の研究開発を開始して以来、現在まで進められています。本研究では、3kW H-OTEC陸上発電パイロットプラント(特に建設原材料取得段階)に対するLCA評価を実施しました。

     

    【成果】
     3kW H-OTEC陸上発電パイロットプラント(特に建設段階)に対するLCA評価を実施するために、メインH-OTEC、海水パイプ、プラント建物に関する現場データを収集しました。これを基にLCA方法論を活用して温室効果ガス排出量を定量化した結果、プラント建物と蒸発器、淡水化凝縮器、フラッシュチャンバーを含むH-OTECメインシステムの材料生産がH-OTEC建設段階の温室効果ガス排出(GHG)に大きく寄与することが確認されました。また、H-OTECの場合、既存のOTECに比べて一部の設備に対してGHG排出係数が低い原材料を使用することができるため、これに対するH-OTECの環境成果を計算しました。例えば、従来のOTECは海水が熱交換器を通過するため、腐食に強いチタンを使用します。H-OTECは水蒸気が熱交換器を通過するのでそれほど高い耐食性は必要ありません。そこでチタンの代わりにステンレスを材料に使うことができるので、これによるGHG改善効果を定量化しました。このような結果を第2回SATREPSフォーラムで口頭発表しました。

     

     

    研究紹介_Chun

    図 H-OTECシステム建設段階GHG排出量比設備別寄与度

     

    【成果の意義・今後の展開】
     本研究を通じてH-OTEC建設時の原材料取得に対する環境影響を定量化することができ、今後H-OTEC設備の使用、メンテナンス、廃棄段階に対する研究を持続的に進め、最終的なH-OTEC潜在的環境影響値を算定する予定です。また、H-OTECを通じて生産した電力と蒸留水は様々な産業にも活用できるため、これに対する環境成果をLCAで定量化し、他の清浄エネルギー源(風力、太陽熱など)との比較評価も行う予定です。

    2023年03月23日