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  • IDEA物量・経済連関表を活用した経済影響評価手法
  • IDEA物量・経済連関表を活用した経済影響評価手法

    塚原 建一郎(社会とLCA研究グループ)

    • 田原 聖隆(IDEAラボ)

    【背景・経緯】
     新技術が導入されると、新たな素材・部品需要の増加、既存素材・部品の減少、産業間の連鎖を通じたモノの流れの変化が生じます。新たな需要が生じると、その需要を満たす生産を行うために必要な原材料の生産活動が生まれるだけでなく、取引の連鎖を通じて、この生産の波及がさらに別の生産活動を促すことになるため、次々と連鎖的に関連する各産業に新たな需要が生み出され、生産が波及し、経済的な価値が創出されていきます。生産活動によって新たに生み出される経済価値を把握するため、IDEA物量・経済連関表(網羅性を有する約2,000製品について生産波及の影響を総合的に評価可能なデータベース)を活用した経済影響評価手法の開発を試みました。

     

    【成果】
     IDEA物量・経済連関表の製品分類ごとの粗付加価値額と逆行列係数を利用し、網羅性を有する約2,000製品について、直接および間接的に国内で生じる粗付加価値額を整備しました。さらに、将来インベントリデータ(将来シナリオに基づく推計値)を反映させたIDEA物量・経済連関表を作成・利用することで、波及的に国内で生じる粗付加価値額の2050年度までの予測値を整備しました。これにより、新技術導入により代替材料に最終需要が生じたときに、シナリオ分析で予測された需要シナリオにおいて、直接的及び間接的に引き起こす全製品の生産に伴う粗付加価値の大きさが計算可能となりました。また、新たな需要が生じた場合、最終的にもたらされる生産の増加を賄うために労働者数がどれだけ増加するかを評価できるようにするため、IDEA物量・経済連関表の製品分類による雇用マトリックスを整備しました。

     

    研究紹介_塚原

    図 生産波及の流れ

     

    【成果の意義・今後の展開】
     今回整備した、粗付加価値誘発額や雇用マトリックスを用いることにより、最終需要の変化から、国内のサプライチェーンを通して生産誘発の連鎖が生じる際の、各製品・サービスごとに生み出される経済的な価値や雇用者数(雇用創出効果)を把握することができるため、新技術導入シナリオ評価への活用が期待されます。今後は、将来シナリオに基づいた推計データの精度を高める予定です。

     

    ※ 本研究の一部は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的新構造材料等研究開発」プロジェクトで実施されました。

    2023年01月24日