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  • 世界有数の豪雪地帯における太陽光発電およびEV充電設備の設計指針提案
  • 世界有数の豪雪地帯における太陽光発電およびEV充電設備の設計指針提案

    櫻井啓一郎(社会とLCA研究グループ)

    【背景・経緯】
     気候変動対策として、地方自治体のレベルでも温暖化ガス排出量の削減が求められています。世界有数の豪雪地帯である北海道ニセコ町も例外ではなく、官民共同出資の企業によって排出を大幅に低減した新しい街区の計画が進められています。排出量削減には住宅の断熱を徹底した上で、太陽光発電(PV)や電気自動車(EV)の活用が有効ですが、年間降雪量12.4m、最大積雪深も2mを超える環境では、大量の積雪による応力や、除雪作業にも対応した設備設計が求められます。また今後30年弱で排出ゼロを目指す中で、PVやEVがどの程度まで有効かというデータも不足しています。

     

    【成果】
     企業からの相談に応じて現地調査を行い、設計指針を提案し、今後実際の設備での検証も予定しています。PVについては建物の壁に垂直に設置する等の方法もありますが、積雪の多いニセコ町では地面から2m以上高い場所にしか設置できず、建造物のデザインにも制約が生じます。EVの充電設備についても、屋外設置では多量の積雪により利用に不便が生じるだけでなく、日常的な除雪のコストも無視できないと思われました。検討の結果、集合住宅の駐車場として、雪下ろしを行わない無落雪屋根の設計が採用されることになりました。予備実験として、企業主導のもとで高耐荷重のパネルを一冬屋外に設置し(下図)、基本的に雪下ろしをせずとも耐えられそうなこと、低角度設置で横方向への摺動も問題なさそうなことも確認しています。これらの結果も踏まえて現在、新街区の設計と建設が進められています。

     

     

    研究紹介_櫻井

    図:ニセコ町における無落雪型屋根を模した試験設備(左)と積雪期の様子(右)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     これまでの調査結果から、豪雪地帯におけるPVやEVの設備設計の指針が得られました。一方で冬期は太陽電池に雪が積もったままになりますので、今後排出をゼロにするためには、他の電源や蓄エネルギー設備も組み合わせていく必要があります。実際の設備から複数年に亘ってPVとEVの運用データを収集し、現状でどこまで効果があって今後どれだけ取り組みが必要なのか、排出削減効果の定量化や、課題の抽出等を進めていきます。

    2022年11月28日