• ホーム
  • 研究紹介
  • 周期的な凹凸壁面構造を持つ直管による爆風低減の可能性
  • 周期的な凹凸壁面構造を持つ直管による爆風低減の可能性

    杉山勇太(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
    火薬類の爆発によって発生する爆風や飛散物などは周囲に人的、物的被害を及ぼす可能性があるため、爆発影響の低減技術の開発が求められています。ここでは管内爆発によって発生する爆風の低減技術に関する研究を行いました。管内爆発による爆風が外部に解放される場合、爆風影響は管出口における爆風強さに強く依存(1)することが知られており、管内を爆風が伝播する間の爆風低減技術が重要です。過去の研究(2)では断面積縮小部を設けることで管内を伝播する衝撃波が減衰することが報告されており、本研究では管構造の工夫による爆風低減技術開発に向けて、周期的な凹凸壁面構造を持つ直管モデルによって管外部の爆風低減が可能か検証するため、数値解析を行いました。

    【成果】
    図(a)は本数値解析で使用した直管モデルの床面と天井に凹凸壁面を設置した場合の模式図となります。直管モデルは1辺30 mmの正方形断面、全長330 mmであり、図(b)の凹凸壁面を挿入することで爆風低減を検討しました。凹凸壁面は30 mm長さのスペーサー(火薬類起爆後の爆風の助走区間)を伝播した後に床面と天井にそれぞれ深さ3 mm、4 mmの周期的な凹凸壁面を設け、凸部長さと間隔をそれぞれ3 mm、27 mmとし直管内に10周期となるように作成しました。火薬類の爆発によって発生した爆風が凸部に到達するたびに回折と反射を繰り返すことによって伝播が乱された後に出口から放出されます。図(c)は管外部のx軸上の爆風圧分布であり、黒色/赤色のデータは凹凸壁面なし/ありの結果であり、プロットと実線はそれぞれ過去の実験(3)と本数値解析結果になります。実験結果と良い一致を示しています。凹凸壁面構造を設置することによって約40%の爆風圧低減を達成しました。

    図 凹凸壁面による爆風低減効果の検証

    【成果の意義・今後の展開】
    数値解析によって実験で得られていた周期的な凹凸壁面による爆風低減効果を評価することができました。数値解析では凹凸壁面構造を容易に変更することが可能なので、今後は凹凸壁面の深さや間隔などを変えて計算結果を得ることで、爆風低減効果の物理的背景の解明や、効率の高い凹凸壁面形状の提案を行い、国際誌への成果発表を進めていきたいと思います。基礎研究として爆風低減機構の解明を進め、その結果を踏まえて爆風影響低減化技術の開発に活用していきたいと思います。

    参考文献

    1. N. Kingery, and E.J. Gion, BRL-TR-3132, Ballistics Research Laboratory (1990)
    2. Ohtomo et al., Shock Waves 14, 379-390 (2005)
    3. 保前ら,火薬学会2021年度春季研究発表会 講演要旨集 127-130 (2021)

    ※ 本研究はJSPS科研費18K04643の助成を受けたものです。

    2021年09月16日