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  • 水緩衝材による爆風被害の低減
  • 水緩衝材による爆風被害の低減

    丹波高裕(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】

    爆発時に周囲に伝播する爆風による被害を防ぐためには、土堤や防爆壁などの防護構造物が用いられます。しかし、十分な効果を得るには構造物が大規模になることから、高コストかつ迅速な設置が困難であり、適用は火薬庫等に限られます。爆風低減の別な手法として、安価で輸送が容易な水を緩衝材として用いて爆発のエネルギーを吸収することが期待されています。本研究では、爆風に対する水の緩衝効果とその特性を評価する基礎研究を実施しており、2019年度には水液滴のかさ密度が爆風低減率に影響することを明らかにしています。2020年度は水緩衝材の投与方法について検討を行い、水液滴と水壁の爆風低減効果を比較しました。

     

    【成果】

    図は水壁の構造および爆風の最大圧力の減少率を示します。C-4爆薬8 gの周囲を水壁で満たし、爆発で発生した爆風圧力を測定しました。水緩衝材なしの場合の爆風圧力を基準として、圧力の低減率を評価し、2019年度に実施した水液滴の結果と比較しました。

    水壁を用いると、爆薬の近傍では大きな爆風低減率を得られるものの、爆薬からの距離が離れると低減率は低下しました。水の質量100 g程度のとき水壁と水液滴の爆風低減率を比較すると、水液滴のほうが高い低減率を得られることが明らかになりました。水壁による爆風低減は爆薬からの距離の影響を受けるため、100 gの水液滴と同等の低減率を全域で達成するためには、質量で9倍の水壁が必要となります。これは、爆風低減が水緩衝材の投与形態の影響を受けること、水液滴として投与することが効果的であることを示しています。これらの成果はShock Waves誌(T. Tamba, Y. Sugiyama, K. Ohtani, K. Wakabayashi, Shock Waves, 31, 89-94, 2021)、衝撃波シンポジウムで発表されました。

    研究紹介_20211130_丹波高裕(爆発安全研究)

    図 水壁の構造と爆風圧力の減少率

     

    【成果の意義・今後の展開】

    2020年度に得られた結果から、水緩衝材の投与形態として、水液滴が優れていることが明らかになりました。水液滴の投与に構造物は必要なく、ノズル等で容易に散布できるため、不発弾処理や爆発テロといった、予見困難な現場における新たな爆風低減手法となりえます。今後は、水液滴の粒径や散布厚みの影響を調査し、爆風低減に最適な水液滴の散布方法を明らかにして、水液滴による爆風低減の実用化に取り組んでいきます。

    2021年11月30日