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  • セルロースナノファイバーの製造施設における排出と暴露の評価
  • セルロースナノファイバーの製造施設における排出と暴露の評価

    小倉 勇(排出暴露解析グループ)

    【背景・経緯】

    軽量で高強度、低熱膨張率等の特徴を有するセルロースナノファイバー(CNF)は、新しい材料として期待され、様々な用途への開発が進んでいます。一方、新しい材料であることから、その安全性について注意する必要があります。特にCNF粉末を取り扱う際には、CNFが飛散し、吸入暴露が起こる可能性があることから、適切な管理対策を講ずることが望まれます。しかし、微小なCNFの粉じんは目に見えないため、CNFの排出と暴露の状況を把握し、管理対策の有効性を評価することは簡単ではありません。そこで、我々は、熱分解ガスクロマトグラフィー質量分析(GC-MS)を用いたCNFの定量法を開発するとともに、実際にCNFの製造施設において、CNFの排出と暴露の評価を行いました。

     

    【成果】

    換気による気流の中でCNF粉末を回収する工程(左図)と、ヒュームフード内でCNF粉末を小分けする工程(右図)を対象に評価を行いました。粉じんをエアロゾル計測器で計測するとともに、フィルタで捕集し、重量分析、炭素分析、熱分解GC-MSおよび電子顕微鏡観察を行いました。各測定の結果から、両工程ともにCNFの飛散が確認されましたが、換気システムまたはヒュームフードによって、飛散したCNFは、作業者の近傍には広がることがなく、効果的に除去されていました。熱分解GC-MSにより測定された作業者近傍のCNF濃度は2 μg/m3未満であり、一般の粉じんの許容濃度や、カーボンナノチューブや二酸化チタンナノ粒子などのナノ材料の許容濃度と比較しても、十分に低いレベルでした。本研究は、熱分解GC-MSによるCNFの定量に基づき、CNFの作業環境における排出・暴露や管理対策の評価が可能なことを示しました。

    研究紹介_20211130_小倉 勇(排出暴露解析)

    図 CNF製造施設におけるCNFの排出と暴露の評価

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本研究結果は、“Measurements of cellulose nanofiber emissions and potential exposures at a production facility”と題した研究論文にまとめ、NanoImpact(発行元Elsevier)において2020年10月に発行されました(https://doi.org/10.1016/j.impact.2020.100273)。今後、CNFを取り扱う事業者の自主安全管理の支援や、CNF含有製品の開発や普及に役立つものと考えます。

     

    ※ この成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務(JPNP13006)の結果得られたものです。

    2021年11月30日