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  • 豪雪地帯の地方自治体(北海道ニセコ町)における電気自動車普及の課題と対応方策
  • 豪雪地帯の地方自治体(北海道ニセコ町)における電気自動車普及の課題と対応方策

    櫻井啓一郎(社会とLCA研究グループ)

    【背景・経緯】
     気候変動の悪化が懸念される中、世界有数の豪雪地帯である北海道ニセコ町においても、脱炭素化が目指されています。その一環として道路輸送における電気自動車(EV)の利用が検討されていますが、最大の積雪深が約3メートルに及ぶこともあります。これほどの豪雪地におけるEVの運用は世界的にも前例に乏しく、特有の課題が多数あります。ガス欠ならぬ電欠になった車を救出する時には、どのような備えが必要か。大型の除雪車をEV化できるか。屋外の駐車場において、どのように充電器を設置すれば良いか。公共交通のEV化をどう進めるか。そのような課題に対して、解決策の検討と提案を進めています。

     

    【成果】
     これまでの研究で、ニセコ町周辺の幹線道路における急速充電インフラの整備間隔の目安や、電欠車が発生した場合の救出態勢について具体的な検討を行いました。また大型の除雪車両のEV化の可能性について検討し、現在のバッテリー性能の向上ペースから今後5~10年程度でそのような大型重機でもEV化が可能になるとの予想を示しました。これらの検討をさらに進め、農機や路線バスについてもEV化が可能な一方、充電インフラや、それを支える送配電インフラの整備が必要との予測も新たに示しました。
     これらの検討結果を踏まえてニセコ町におけるEVの普及方策に関する具体的提言を行い、ニセコ町の「脱炭素アクションプラン」(※)に反映されました。さらに、同様の趣旨の問い合わせが他の地方自治体からも相次いだことから、自治体やNGO、EV充電インフラ企業等と協力して「地方自治体のEV普及戦略」(図)としてガイドラインを作成し、公開しました。

    ※「ニセコ町 脱炭素アクションプラン」  https://www.town.niseko.lg.jp/resources/output/contents/file/release/905/49614/AP.pdf

     

    図 「地方自治体のEV普及戦略 2024年版」
    (ISEP:https://www.isep.or.jp/archives/library/14935)

     

    【成果の意義・今後の展開】
     地方自治体の脱炭素化は全国一律のやり方では済まず、地域ごとの事情や使えるもの(資源)に応じて立案する必要があります。ニセコ町の積雪量は他の地域に比べて厳しい条件ですので、ここで得られた知見は、他の積雪地の自治体にも横展開できるものと期待されます。一方で上記以外にも、住宅の脱炭素化とEVとの連携や、地域内で発電した再エネを活用する方策など、多くの課題が考えられます。地域毎の事情に即した脱炭素化の推進のため、今後とも地方自治体の支援を続けて参ります。

     
    ※ 本稿内容は(株)ニセコまち、ISEPの方々との取り組みに基づきます。

    2024年12月24日