火薬類取締法施行規則にJIS K 4810:2023で定めた安定度試験が採用
岡田 賢(爆発安全研究グループ)
【背景・経緯】
火薬類の安定度試験については、製造後長期間保管される火薬類の増加や、劣化挙動に関する科学的知見の進展を背景として、近年見直しの必要性が高まっています。硝酸エステルを含む火薬は、保管中に経時的な分解が進行し、自然発火等の危険性が生じるおそれがあることから、劣化状況を適切に把握することが不可欠です。一方、従来の試験法については、試験精度や再現性、国際基準との整合性の面で課題が指摘されてきました。このため、国連勧告で採用されている高精度な試験法を参考に、科学的根拠に基づく安定度評価の導入と、安全性確保と両立した試験頻度や管理方法の合理化を目的として、試験体系の見直しが進められてきました。
【成果】
2023年には産総研が中心となり、ベルクマン・ユンク(BJS)試験およびメチルバイオレット紙(MV)試験がJIS K 4810へ新たに追加され、試験法の標準化と信頼性向上が図られました。これを踏まえ、令和7年6月1日施行の火薬類取締法施行規則の一部改正では、技術基準の見直しにより当該JISが引用され、安定度試験の方法として採用されました。特にBJS試験については、安全性確保と保管管理の合理化の観点から、実施頻度が従来よりも整理され、1年毎の確認で安全上問題ないことが規則に明記されました。使用者の利便性も向上し、実施する企業が増え、社会実装が完了しつつあります。
また、窒素量、安定剤、劣化度合いが異なるニトロセルロースや無煙火薬17種類を用い、BJS試験とMV試験の試験条件・手順・再現性を精密に検証するとともに、データを追加して検討した結果、両試験間の合否結果(図中passかfailか)が一致するものは、94%(16種類)でした(図)。

図 MV試験とBJS試験の相関関係(●ニトロセルロース、〇無煙火薬)
合格ライン:MV>30 or 35min, BJS<2.5mL/g (このラインを境にpassかfailかが判定される)
【成果の意義・今後の展開】
従来の目視判定中心の耐熱試験に比べ、BJS試験では発生NO₂量を滴定で定量できる精度の高い評価が可能となり、火薬類の劣化判定の信頼性が大きく向上しました。また、MV試験との整合性も確認され、国際基準との整合性が検証された点も重要です。産総研の標準化研究によりJIS化が進み、これを受けて火薬類取締法にも正式採用されました。これにより、今後、保安規制の国際化、より適切な劣化火薬の管理が進むことが期待されます。
[1] ニトロセルロースを含有する火薬類の安定度試験に関するJIS開発 (2022年) 安全科学研究部門HP (https://riss.aist.go.jp/research/20220330-2051/#gsc.tab=0)
2026年06月03日

