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  • ギンザケ胚細胞が示す6PPDQへの特異的な応答性を明らかにした細胞影響評価
  • ギンザケ胚細胞が示す6PPDQへの特異的な応答性を明らかにした細胞影響評価

    森山章弘(生態・健康影響評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     近年、タイヤに使用される老化防止剤6PPDが環境中で変化して生成される6PPD-キノン(6PPDQ)が、サケ科魚類、特にギンザケに強い影響を及ぼすことが報告されています。その一方で、6PPDQと同じ系統に属する他のp-phenylenediamine quinone(PPDQ)類が細胞レベルでどのような反応を引き起こすのかについては、十分に解明されていませんでした。そこで本研究では、3種類のPPDQ(6PPDQ、7PPDQ、8PPDQ)を対象に、ギンザケ(Oncorhynchus kisutch)由来の胚細胞株CSE-119を用いて24時間の影響評価を行い、各化合物に対する細胞応答の違いを明確にすることを目的としました。

     

    【成果】
     本研究では、ギンザケ胚細胞株CSE-119に対し、6PPDQ・7PPDQ・8PPDQを培地に溶解し、24時間暴露したのち、細胞の活性状態の変化を調べました。そのために用いた「アラマーブルー試験」は、細胞内酵素と反応する蛍光色素を利用した評価方法で、細胞の活性を蛍光強度から測ることができます。何も添加しない細胞を100%活性として基準を定め、比細胞活性を指標として評価しました。その結果、6PPDQのみが濃度に応じて細胞の活性を低下させ、EC50(50%効果濃度)は14.9 μg/Lと推定されました。一方、7PPDQと8PPDQでは、最大濃度である500 μg/Lにおいても細胞活性は90%以上を維持し、明確な変化は見られませんでした。このことから、CSE-119細胞は6PPDQに対して特に強く反応し、他のPPDQ類にはほとんど影響を受けないことが示されました。本成果は、国際誌に掲載されました1)

     

    図 PPDQ類のCSE119細胞を用いた細胞活性評価

     

    【成果の意義・今後の展開】
     本研究で明らかになったCSE-119細胞の6PPDQへの高い応答性は、タイヤ由来化学物質に対する迅速な影響評価ツールとして活用できる可能性を示しています。また、7PPDQと8PPDQがほとんど応答しなかったことから、化学構造の違いが影響の生じやすさを左右することが示唆されました。今後は、他の組織由来細胞との比較や、細胞内の代謝過程に焦点を当てた研究を進めることで、環境中の当該化学物質群の評価の精度向上につながると期待されます。
     
    ※ 謝辞
    本研究の一部は、株式会社ブリヂストンの資金提供を受けて実施されましたが、研究内容および結論は著者らの判断によるものであり、企業からの影響は受けておりません。
     
    1) Mano, H., Moriyama, A., Hara, J., Tai, R., & Naito, W. (2025). Acute Toxicities of Three Para-Phenylenediamine Quinones to Coho Salmon (Oncorhynchus kisutch) Juveniles and Embryonic Cells. Bulletin of environmental contamination and toxicology, 115(6), 78. https://doi.org/10.1007/s00128-025-04150-6

    2026年06月03日