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  • 廃棄物を最大限に活用した新しい養豚システムによる環境負荷と窒素排出の低減
  • 廃棄物を最大限に活用した新しい養豚システムによる環境負荷と窒素排出の低減

    李友仁(IDEA開発研究グループ)

    • 林彬勒(元リスク数理解析研究グループ)
    • 井上和也(リスク数理解析研究グループ)
    • 一杉佑貴(IDEA開発研究グループ)
    • 利谷翔平(東京農工大学)
    • 寺田昭彦(東京農工大学)

    【背景・経緯】
     養豚は大量の飼料や水、エネルギーを必要とし、温室効果ガスや反応性窒素の排出が大きい産業です。特に飼料生産と糞尿処理が環境負荷の主要因となっています。一方で、従来の堆肥化や排水処理だけでは資源の有効利用が十分とは言えません。こうした課題に対し、廃棄物を資源として循環させる「循環型バイオ経済」の考え方が注目されています。しかし、こうした新しいシステムが実際にどの程度環境負荷を低減できるかを、定量的に評価した研究は限られていました。そこで本研究では、高収量イネ(rice)、糞尿の乾式嫌気性消化(AD)、および微生物タンパク質(MP)生産を組み合わせた三位一体型の新しい養豚システムを提案し、それぞれの技術を導入した後の環境影響と窒素フットプリントを評価しました。

     

    【成果】
     提案した三位一体型システムは、従来の養豚と比べて環境負荷を大きく削減できることを示しました。まず、飼料のトウモロコシを高収量イネに置き換えることで、温暖化、酸性化、富栄養化、生物毒性への影響をそれぞれ約30~60%低減できました。さらに、糞尿処理に乾式嫌気性消化を導入することで、排泄物由来の窒素排出を抑え、窒素フットプリントは約55%削減されました。このように、各プロセスの改善により系全体の環境負荷低減が可能であることが示されました。特に重要なのは、バイオガスを活用した微生物タンパク質生産の導入です。これはメタンやCO₂、消化残渣中の窒素をバイオマスとして固定する役割を持ち、結果として温暖化影響を約80%以上、他の環境影響も最大で90%程度削減する効果を示しました。加えて、タンパク質の総生産量も増加し、単位タンパク質あたりの環境負荷を大幅に低減できることが明らかになりました。
     図には、温室効果ガス排出に関して、各技術を比較した結果を示しました。
     研究論文1報を発表しました。DOI: 10.1016/j.jclepro.2026.148304

     

    図 新しい技術による温室効果ガス(GHG)の排出量の比較
    Base:従来の技術によるシナリオ
    With rice、With AD、With MP:高収量イネ(rice)、糞尿の乾式嫌気性消化(AD)、微生物タンパク質生産(MP)を導入したシナリオ
    With all:rice、AD、MPを一斉に導入したシナリオ

     

    【成果の意義・今後の展開】
     本研究は、飼料・排泄物・エネルギーを一体で循環させることで、養豚を低炭素かつ資源効率の高いシステムへ転換できることを示しました。特に微生物タンパク質(MP)生産は炭素と窒素の有効な吸収源として機能し、従来の環境負荷の要因を有意に改善できる点に意義があります。今後はMP生産のスケールアップや排水処理など周辺プロセスを含めた最適化を進めることで、実用的かつ持続可能な畜産システムとしての社会実装が期待されます。

     

     

    ※ JSTのJPMJPF2104研究資金をいただきました。

    2026年07月10日