グローバルサプライチェーンにおける鉱物資源採掘国の特定とLCAへの応用
横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)
【背景・経緯】
鉱物資源の偏在と経済のグローバル化により、各国は自身の経済活動によりサプライチェーンを通して資源埋蔵国に対して資源採掘やそれに伴う環境影響を誘発しています。電源構成や生物種分布、鉱石品位および埋蔵量などの違いから資源採掘による環境影響は採掘地点により異なります。そのためライフサイクルアセスメント (LCA) を実施する上では、対象製品におけるサプライチェーンを追跡して原材料の資源採掘地点 (国) を特定し、採掘地点の特性を反映させた評価を行うことが望ましいとされます。しかし、サプライチェーンの複雑化等の理由により、評価者 (企業等) が資源採掘までサプライチェーン全体を把握できるケースは多くはなく、自身の活動が資源採掘を誘発している国の特定は容易ではありません。
【成果】
本研究では、世界各国のセクター間の経済取引をまとめた多地域間産業連関 (MRIO) 表をベースに、国別資源採掘量データと貿易統計を用いてMRIO表における各国の資源採掘部門を個別の資源レベルへと分割することにより、32資源種189ヶ国を対象に各国が経済活動を通して「どの国」に「どれくらい」資源採掘を誘発しているかを推計しました。得られた結果の例として日本が各国に誘発したニッケル採掘量の分布を図に示します。さらに資源採掘による影響を外部費用として定量化した筆者らの先行研究 (https://riss.aist.go.jp/research/20251209-3405/#gsc.tab=0) と組み合わせることで、各資源使用国がサプライチェーンを通して誘発している資源採掘の外部費用を推計するとともに、単位資源使用量当たりの外部費用を表す評価指標を整備しました。本成果は、日本で開発され使用されているLCAの環境影響評価手法LIME3 (https://www.maruzen-publishing.co.jp/book/b10122566.html) において資源消費の消費基準特性化評価指標としても搭載予定です。
本研究成果は下記論文で公開されています。
Yokoi, R., Kanemoto, K., Itsubo, N., Motoshita, M., 2025. Potential impact of abiotic resource use considering country-specific supply chain: consumption-based characterization and normalization utilizing a multi-regional input–output model. Int. J. Life Cycle Assess. 30, 2003–2019. https://doi.org/10.1007/s11367-025-02481-4

図 2015年に日本が各国に誘発する資源採掘量の分布 (ニッケルの例)
【成果の意義・今後の展開】
本研究成果は、LCAにおいて資源採掘国が特定できない場合に、国レベルの平均的なサプライチェーンにおける資源別の採掘国の構成として活用することができます。さらに本研究における誘発資源採掘量の推計結果は、資源採掘に伴う他の環境影響 (土地改変による生態系への影響等) の評価や資源の供給リスク評価にも応用が可能であり、資源採掘が引き起こす様々な問題に対する責任やリスク緩和に向けた対策に関する議論への貢献も期待されます。
※ 本研究の一部は、JSPS科研費 21H04944および23K28302の助成を受けたものです。
2026年07月10日

