ナノセルロース粉体の発塵性およびエアロゾル特性:作業現場における暴露および安全管理への示唆
小倉 勇(暴露計測研究グループ)
【背景・経緯】
セルロースナノファイバーやセルロースナノクリスタル等のナノセルロース材料は、再生可能資源由来の材料として、多様な産業用途への展開が期待されています。一方で、ナノ材料や繊維状物質については、安全な取り扱いの観点から、作業者の吸入暴露の管理が重要とされています。
そこで本研究では、ナノセルロース乾燥粉体の安全な取り扱いを支援することを目的として、その発塵性(ダスティネス)、サイズ分布および形態を評価するとともに、携帯型エアロゾル測定器の有効性を検討しました。9種類のナノセルロース粉体試料について、欧州規格EN 17199に基づく小型回転ドラム法によるダスティネス試験を行い、発生粒子をエアロゾル測定器、重量分析、顕微鏡観察により評価しました(図)。

図 小型回転ドラム法によるナノセルロース粉体の発塵特性の評価(Ogura and Kotake, 2026)
【成果】
すべての試料において、肺の深部まで到達しうる吸入性粒子(<約4 µm)の発塵が確認されました。単位粉体量当たりの吸入性粒子の発塵量は10~300 mg/kgであり、他のナノ材料について報告されている値と同程度でした。エアロゾル化したナノセルロースは、孤立した繊維状粒子としてではなく、主に約0.1~10 µmの凝集体として存在していました。これらの結果から、約0.1~10 µmの凝集粒子を考慮した暴露管理(囲い込み、局所排気装置および保護具の使用など)ならびに暴露測定が重要であると考えられます。
また、携帯型エアロゾル測定器の有用性を評価した結果、大きな粒子の割合が相対的に高い試料では、光散乱式粒子計測器は測定粒径範囲の下限(0.3 µm)付近の粒子濃度を過大評価し、粉塵計は総粒子重量濃度を過小評価する傾向が認められました。ただし、これらの制約を踏まえた上で測定データを適切に解釈することにより、携帯型エアロゾル測定器は現場における安全管理に有効に活用できると考えられます。
本成果は、下記の国際学術誌に掲載されました。
- Isamu Ogura, Mari Kotake (2026). Dustiness and aerosol characteristics of nanocellulose powders: Implications for workplace exposure and safety management. NanoImpact 41, 100610. https://doi.org/10.1016/j.impact.2025.100610
【成果の意義・今後の展開】
本研究の成果は、ナノセルロース粉体を取り扱う現場において、発塵特性やエアロゾル特性を踏まえた適切な暴露評価および安全管理を進めるための基礎的知見を提供するものです。また、携帯型エアロゾル測定器の特徴や留意点を整理したことで、現場での測定や暴露管理への活用も期待されます。今後は、本研究で得られた知見を基に、ナノセルロース材料の安全な取り扱いに関する技術相談や情報提供を通じて、現場での適切な安全管理を支援していきます。
※本成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発/CNF利用技術の開発/多様な製品用途に対応した有害性評価手法の開発と安全性評価」(JPNP20009)の結果得られたものです。
2026年07月10日

