専門家による国際的合意に基づいたLCAにおける自然資源利用の影響評価とその推奨モデル
本下晶晴(持続可能システム評価研究グループ)
【背景・経緯】
我々が生産・消費活動を支える重要な基盤として利用している鉱物、化石燃料、水、土地などの自然資源は社会の共有財であり、自然資源がもたらす機能や価値の利用により、あるシステムでは価値や便益が得られる一方、他のユーザーにとっては享受できる価値や便益が失われることがあります。ライフサイクルアセスメント(LCA)ではこうした影響を評価する手法が多く提案されてきましたが、評価手法によって考え方や評価指標が異なり、どの手法を使うべきか分かりにくいことが課題でした。そこで2019年から約5年をかけて、UNEP Life Cycle InitiativeのプロジェクトGlobal Guidance for Life Cycle Impact Assessment Indicators(GLAM)の第3期タスクフォースにおいて、国際的な専門家と議論を重ねました。
【成果】
59名の国際的な専門家・関係者による合意形成を通じて、自然資源の利用によって他のユーザーが享受できる価値や便益が制限を受けることを評価対象として定義するとともに、鉱物、化石燃料、水、土地など自然資源全般に共通した影響経路の枠組み(図1a)を整理しました。そのうえで、既存の20手法について、新たに定義した自然資源利用の影響評価の考え方との整合性、科学的妥当性、実務への適用可能性など、10の評価基準に基づいて総合的に比較・評価しました。その結果、鉱物・化石燃料についてはFuture Welfare Loss(FWL)モデルを推奨手法として選定し、81種の鉱物、3種の化石資源、2種のエネルギーキャリアの特性化係数を更新しました。世界全体の年間影響は約3.5兆米ドル(2018年の世界GDPの約4%)と推定され(図1b)、年間の経済成長率とほぼ同程度の資源の価値や便益の損失が生じており、持続的な資源利用に向けた対策の必要性が改めて認識されました。
本成果は下記論文にて公表しています。
Motoshita et al. (2026) Int. J. Life Cycle Assess. 31, 179
https://doi.org/10.1007/s11367-026-02733-x

図 自然資源利用に伴う影響発生までのメカニズム(a)と
世界において1年間に生産された鉱物・化石資源利用による影響の内訳(b)
(本成果の公表論文Motoshita et al. 2026のFig.1およびFig.5を日本語に翻訳)
【成果の意義・今後の展開】
自然資源利用による影響について異なる資源を共通の考え方で捉えるための基盤が構築できました。特に鉱物・化石資源では、国際合意に基づく推奨手法とその影響評価係数を提供しており、ユーザーにとっては専門家による推奨に基づいた評価手法の選択により実務での利用しやすさが大きく向上します。今後は自然資源がもたらす価値や便益の損失だけでなく、自然資源利用に関わる生態系への影響なども含めた包括的な評価手法へと発展させていきます。
2026年10月21日

