含水爆薬中間体(ANE)の最小燃焼圧力(MBP)試験のJIS導入と国連試験の修正
丹波高裕(爆発安全研究グループ)
【背景・経緯】
含水爆薬中間体(ANE)を用いた発破工法では、非火薬に分類されるANEを発破現場で発泡剤と混合・鋭敏化して発破孔に機械装填するため、安全性の向上と省人化が期待されます。ANEの候補となる物質をポンプで圧送する際には、摩擦による温度上昇によって着火のおそれがあるため、ANEの爆発リスクを評価する最小燃焼圧力(MBP)試験が開発されました。MBP試験は、候補ANEが非火薬とされる程度に鈍感か判断するための試験として国連試験シリーズ8に組み込まれています。このMBP試験を日本でも実施できるよう、JISへの導入を目的に3年計画の事業で、国内規格の機材を用いた試験を実施し、試験手法の妥当性を検討しました。
【成果】
水分量と組成の異なるANEとして、硝酸アンモニウム-硝酸ナトリウムエマルションエマルション(水分量11%、15%、17%)、硝酸アンモニウムエマルション(水分量12%、15%、17%)、含水爆薬を試験に用いました。アルゴン加圧下で鋼管に入れた試料をメートル法規格のニクロム線で点火し、質量減少が50%以上のものを「爆」、それ以外を「不爆」と判定しました。「不爆」のうち最も高い初期圧力と「爆」のうち最も低い初期圧力の平均をMBPとすると、MBPと水分量に組成ごとの比例関係が見出され、試験手法の妥当性が確認されました。また、示差走査熱量測定(DSC)による熱分析を行い、得られた発熱分解エネルギーから試料の燃焼温度を推定すると、燃焼温度とMBPには組成を横断した相関関係があることが明らかになりました(図)。つまり、DSC分析はMBP推定のスクリーニング手法として有効であると言えます。これらの成果はFirePhysChem誌(T. Tamba, T. Shibata, M. Akiyoshi, K. Okada, Shock Waves, FirePhysChem 6 (2), 210-215, 2026)で発表されました。

図 燃焼温度とMBPの関係
赤:硝酸アンモニウム-硝酸ナトリウムエマルション、青:硝酸アンモニウムエマルション
数字:水分量
【成果の意義・今後の展開】
この成果は、点火線として国内で入手可能なメートル法規格のニクロム線を用いてMBP試験が適切に実施できることを示すもので、MBP試験をJIS K 4828-4(火薬類危険区分判定試験方法)に導入することが原案作成委員会で承認されました。また、国連試験法についても日本から修正提案が行われ、点火線の直径に幅を持たせてメートル法規格を許容する、再現性に関わる実施手順を明文化する、等の改訂が認められました。
※ 本成果は、令和4-6年度産業標準化事業委託費(戦略的国際標準化加速事業:産業基盤分野に係る国際標準開発活動)の成果の一部で、公益社団法人全国火薬類保安協会、日本工機株式会社と共同で実験を進めました。
2026年10月21日

