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  • セルロースナノファイバーの経皮曝露試験法の確立
  • セルロースナノファイバーの経皮曝露試験法の確立

    小栗朋子(環境暴露モデリンググループ)

    • 藤田克英(リスク評価戦略グループ)
    • 小原佐和枝(リスク評価戦略グループ)
    • 遠藤茂寿(リスク評価戦略グループ)
    • 後居洋介(第一工業製薬株式会社)
    • 谷史人(京都大学)
    • 小川剛伸(京都大学)

    【背景・経緯】

    セルロースナノファイバー(CNF)は新たな材料として様々な工業製品としての応用が期待されています。CNFの応用領域は自動車から食品、医薬品、化粧品など多岐にわたりますが、CNFは天然由来の新たなナノ材料であり、ヒトへの有害性や暴露量に関しては不明な点が多く、その評価手法については未だ確立していません。

    CNFが化粧品や医薬品材料として使用される場合、ヒトへの皮膚を介した暴露の可能性が考えられます。しかし、これまでCNFの経皮吸収の有無やその速度について定量的な解析は行われていません。そこで本プロジェクトでは、CNFの皮膚を介した暴露可能性を明らかとするため、CNFの経皮暴露について試験手法の開発を行いました。

     

    【2019年度の取組みと成果】

    化学物質の経皮吸収を評価する手法として皮膚透過性試験があります。皮膚透過性試験では従来ヒトや動物皮膚が利用されるが、倫理面やコストなどの問題があることから、皮膚代替膜を用いた試験法の開発が望まれています。そこで本研究では、皮膚代替膜として開発された高機能人工合成膜、三次元ヒト培養皮膚モデルを適用し、CNFの皮膚透過性試験手法の検討を行いました。

    高機能人工合成膜による透過性試験では、透過性試験手法の妥当性を確認した上で、CNF構成糖である単糖から三糖について24時間透過性試験を行ったところ、透過液に糖は検出されませんでした。次に、三次元培養皮膚モデルによる透過性試験では、染色CNFの透過は確認されず、蛍光ラベル化CNFについても検出下限値以下でした。よって、CNFの皮膚透過は極めて遅いか、透過しない可能性が考えられました。

    今回検討した皮膚代替膜を用いた皮膚透過性試験手法はCNFの皮膚透過性試験に適用可能であることが確認されました。

     

    【成果の意義・今後の展開】

    今回の結果を「セルロースナノファイバーの有害性試験手順書」としてとりまとめ、Web上で公開しました。成果の詳細はリンク先より閲覧可能です(/assessment/45276/)。本手順書で示した経皮暴露評価に関する知見は今後CNFを取り扱う材料メーカーや化粧品を含む消費者製品メーカーなどの安全管理を支援し、CNF含有製品の開発や普及に貢献するものです。

     

    ※ 本研究は国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)より委託された「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発/CNF安全性評価手法の開発(P13006)による研究成果です。

     

    図 皮膚透過性試験用のフランツセル

    2020年07月13日