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  • 2019年度火薬類保安技術実験(野外実験)
  • 2019年度火薬類保安技術実験(野外実験)

    松村知治(爆発安全研究グループ)

    • 若林邦彦(爆発安全研究グループ)
    • 杉山勇太(爆発安全研究グループ)
    • 丹波高裕(爆発安全研究グループ)
    • 久保田士郎(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 佐分利禎(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 牧野良次(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 緒方雄二(安全科学研究部門)

    【背景・経緯】

    経済産業省は、通商産業省時代の1961年から各地の陸上自衛隊演習場を借用して、火薬類の大規模な爆発実験(火薬類保安技術実験、以降、野外実験)を実施しています。本実験で得られた成果は、火薬類取締法に反映され、法令の改正、保安行政上の指導のための資料として活用されています。産総研は、この実験に第1回目(国立研究所時代)から継続して参加・協力し、実験計画の立案、実験データの計測・評価と報告書の執筆、技術基準案の検討、に携わっています。直近の3年間(2016年度から2018年度)では、地中式火薬庫の保安距離をテーマに実験を行い、火薬庫の庫口を起点とする爆風圧の評価と保安距離の技術基準案を検討しました。

     

    【2019年度の取組みと成果】

    2019年度からは、防爆壁をテーマに新たな検討が始まりました。煙火製造工場の火薬関連施設は、立地後の周辺環境の変化に伴い、保安距離や施設の能力の見直しが求められています。この問題を解決するために、従来よりも爆風圧を低減できる新たな防爆壁の位置、構造をいくつか提案して、それらの爆風圧低減効果を野外実験で確認しながら、保安距離の技術基準案を検討します。
    2019年度は、実規模の1/4スケールの模擬防爆壁試験体6種類(うち1種類は既存の防爆壁)で実験しました。その結果、既存の防爆壁に板状の構造を追加すると、構造を追加した方向の特に爆源の近傍で、爆風圧が低減されることがわかりました。加えて、追加した構造の表面で反射して爆源側(構造とは反対の方向)へと伝播する衝撃波の影響(遠方の爆風圧が、既存の防爆壁のそれよりも高くなる現象)を減らす方策として、構造を爆源から離して設置することの有効性が示されました。

     

    【成果の意義・今後の展開】

    2019年度は、既存の防爆壁に板状の構造を追加設置する状況を想定して、6種類の模擬防爆壁試験体を用いて爆風圧の低減効果を検討しました。すべての実験結果の詳細は、委託調査報告書として、過去4年分の結果と共に経済産業省のホームページに公開されています(ホーム ▶ 政策について ▶ 白書・報告書 ▶ 委託調査報告書、URLはhttps://www.meti.go.jp/topic/data/e90622aj.html)。
    今後、数年かけて、数値解析技術の活用や実験室規模での実験データの蓄積、さらには実規模の防爆壁への適用性も考慮しながら、より効果的に爆風圧を低減できる防爆壁の位置、構造に関する検討を進める予定です。

     

    ※ 本研究は、経済産業省、防衛省、公益社団法人全国火薬類保安協会、公益社団法人日本煙火協会、日本火薬工業会、その他関係機関・団体のご協力を得て実施しました。ここに付記し、感謝申し上げます。

     

    図 高速度カメラ撮影画像の一例

    点火から5 ms(ミリ秒)経過後の状況(画像の横幅14.16 m)

    2020年07月13日