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  • DSCに関する研究(2種類のガラス容器で比較)
  • DSCに関する研究(2種類のガラス容器で比較)

    秋吉美也子(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】

    示差走査熱量測定(DSC: Differential Scanning Calorimetry)で得られる発熱量(発熱分解エネルギー)と化学物質の火災・爆発性とには相関性が認められており,DSCは従来危険性評価試験として使用されてきました。DSCは,極めて少量の試料で簡便かつ安全に化学物質の危険性評価を行うのに有効な手段とされています。容器としてはステンレス製耐圧容器を使用することが多いですが,ステンレスなどの金属と反応する物質の危険性評価の判断は未だに課題として残されています。耐圧性があり,且つ,反応に不活性な材質の容器が望まれています。

     

    【2019年度の取組みと成果】

    約50種類の化学物質に対し,反応に不活性なガラス容器を用いて熱挙動を評価しました。ガラス容器はアンプル容器(約100μl,以後GA容器と略)とキャピラリー容器(約12μl,以後GC容器と略)が市販されています。一部の物質で,GA容器で得られる発熱分解エネルギー(QDSC)がGC容器での結果に比べて顕著に小さくなる場合が確認されました。共通する性質は揮発性(昇華性)です。代表として,図はp-ニトロトルエンのDSC曲線をまとめています。GA容器では,発熱反応の直前に吸熱現象が確認され,QDSCは小さくなります。容器高さがあり,気相反応に対し低感度になる傾向が認められました。一方,GC容器は横に倒してアルミニウム製ホルダーに挿入し,装置に設置します。GA容器にアルミニウムホイルを巻いて測定すると,GC容器の結果に近くなります。両容器は構造上異なる現象を評価しており,どちらが正解とも言えません。

     

    【成果の意義・今後の展開】

    DSCでは容器内で起こっている反応に対し,種々の因子が複雑に関与しており,単純ではありません。ガラス容器は耐圧性の問題も含め,場合によっては間違った判断を導くため,測定する際には注意が必要です。現在,金属容器に不活性な材質をコーティングする容器の開発を進めています。

     

    図 p-ニトロトルエンのDSC曲線
    (試料量:6㎎,昇温速度:5K/min)

    2020年07月13日