金属資源の国別の一次供給源における希少性評価
横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)
【背景・経緯】
金属資源は産業活動を進める上で不可欠な存在ですが、その需要を満たすだけの金属供給量を将来にわたって確保できるかという懸念があり、そのような懸念に対して、金属資源の主要な供給源である天然鉱山からの採掘の持続可能性を評価することが必要となります。天然鉱山は様々な国に分布しており、採掘に関わる状況は国によって異なることから、採掘の持続可能性の評価は国別に行うことが望まれますが、既存の研究の多くは世界規模での評価となっており、国別の評価は不十分です。そこで本研究では、金属の一次供給源である天然鉱山からの採掘に関して、国の違いを考慮して持続可能性を評価しました。
【2019年度の取組みと成果】
2019年度では、まず採掘の持続可能性を評価する簡便な指標として、国別の資源採掘量と埋蔵量の比率をその国における資源の”希少性”と定義し、さらにその希少性の国によるばらつきを定量的に評価するための指標を導入しました。以上の指標に基づく評価を16の金属資源を対象に行いました。
評価の結果、それぞれの資源に関して国によって希少性が大きく異なることが示され、また希少性のばらつきに関して資源ごとの特徴を考察しました。これらの結果からは、資源ごとに天然鉱山からの継続的な資源採掘が出来なくなるリスクの大きい国の存在が示唆され、またそのリスクの低減に向けた有効な対策が資源によって異なることがわかりました。さらに本研究で導入した希少性のばらつきを表す指標に加えて、国による採掘量のばらつきを表す指標による評価も行い、2つの指標による評価結果に基づいて資源をマッピングし、資源ごとの特徴の可視化を行いました。
【成果の意義・今後の展開】
本研究の成果は、資源採掘の持続可能性の観点からリスクの大きい金属資源の特定や、リスク低減に向けた対策の検討に対して、地域の視点を加えることでより現実を反映した議論の促進への貢献が期待されます。今後の研究に向けて、国規模から鉱山規模へとより解像度を高めた評価や、資源採掘の持続可能性に関わるその他の要素を加えた多面的な評価への発展を検討しています。
※ 本研究の一部は、JSPS科研費JP19K24394の助成を受けたものです。
図 2017年における主要な採掘国の希少性 (銅の場合)
(濃い色で色分けされた国ほど(金属資源の)希少性が大きいことを表します)
2020年07月15日