市町村における工業部門の電力消費量推計モデルの検討
近藤康彦(持続可能システム評価研究グループ)
【背景・経緯】
近年、再生可能エネルギーの利用促進、また水素エネルギー利用など、新たなエネルギー源の利用によるエネルギーシステムが検討されています。また我が国では身近なエネルギー源を積極的に供給元とした狭域でのエネルギーシステムの検討も行われています。
このエネルギーシステムを検討する際、コンピューターソフトを用いることが一般的ですが、これらモデルにはエネルギーを利用・使用する側である必要量(需要)を、長期にわたり予め与える必要があります。
本研究は一般的なエネルギーシステムが取り扱う世界全体、また国と言った広い範囲ではなく、我が国の県また市町村、或いはいくつかの市町村を一つの範囲とした、狭い地域における需要の推計を行うものです。
【2019年度の取組みと成果】
再生可能エネルギーに依る電力の供給を積極的に進める地方都市とその周辺部を分析の対象としました。この分析対象地域で、既存の水力発電を除く再生可能エネルギー由来の電力が、余剰を出さずに供給可能量を検討するため、現在また将来の電力の必要量(需要)を推計するモデルの構築に着手しました。
まず電力需要を、家庭、商業を含む業務、産業の3つに分類し、さらに業務と産業は、その業種により電力需要は大きく異なるため、産業分類にある中分類程度に細分して検討を行いました。ここでは産業における推計方法について簡単に説明をします。
対象地域を含む県における各産業業種の総生産額に対する電力料金の比率(以下、金額ベース電力消費原単位と記す)を図に示します。平成18~24年度において、金額ベース電力消費原単位は、ほぼ一定の関係があることが解りました。これにより各業種の総生産額から各業種の電力料金が算出可能となり、また平均的な電力料金の単価が解れば電力需要そのものが推計できます。
【成果の意義・今後の展開】
この成果は、狭域での小規模な再生可能エネルギーの導入を進める上では、安定的な電力の授受に必要不可欠となるものです。また国全体、また広範な地域でのエネルギーシステム分析に必要となる電力需要の推計に役立つものとなります。
今後はこの推計方法が、他の県、市町村等でも同様な推計が可能であるのか、モデル式など一般化が可能であるのか、について検討を進めてまいります。
図 金額ベース電力消費原単位(従業者数30人以上の企業)[-]
図の説明:平成18~24年度の期間において各業種の総生産額に対する電力料金はほぼ一定である。なお、平成20年度の統計調査から、業種内に包含される業態の振り分けの変更により、繊維工業や電子部品・デバイス工業などに見られるように、平成19年度から20年度の間で原単位が大きく変化した業種がある。
データソース:福島県統計年鑑(平成18~24年度版各年)
2020年07月15日