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  • 爆轟生成ガスの統一型状態方程式に関する研究
  • 爆轟生成ガスの統一型状態方程式に関する研究

    久保田士郎(爆発利用・産業保安研究グループ)

    【背景】
    激しい燃焼の形態には爆燃と爆轟があります。爆轟の定義は、物質中の燃焼速度が、その物質の音速を超えて伝わる自立した燃焼です。音速を超えない場合が爆燃です。爆轟を呈する物質の代表的なものは、発破作業で使用される爆薬です。爆燃と比べ燃焼速度が2桁大きく、爆轟圧力は10万気圧のオーダーです。
    シミュレーション環境の目覚ましい発達により、現在では爆轟を含む現象もシミュレート可能です。そのためには、少なくとも爆轟生成ガス(爆薬が衝撃を受けて瞬間的に反応し、様々な化学種が混在した高温高圧のガス)の状態方程式が必要です。この研究は、一つの状態方程式のパラメータセットで任意の初期密度の爆轟生成ガスに適用できる比較的新しい統一型状態方程式に関するものです。

    【成果】
    初期密度と爆轟速度の関係を古典的な爆轟理論と組み合わせることにより、一つの初期密度の状態式情報から、任意の初期密度の状態方程式情報が得られる常微分方程式を2003年の国際誌に発表しました1)。この成果は同手法を複数の爆薬に適用し具体的な手法の有効性を示したものです2)。図は爆轟生成ガスの圧力と比体積の関係を示します。爆薬は反応すると高温高圧の爆轟生成ガスになり一気に膨張します。図中の状態線が20GP(20万気圧)以上からスタートしていることから非常に高圧の状態から膨張がスタートすることが理解できます。PETN(真密度1.78 g/cc)は種々に密度に対して状態方程式(JWL状態式)のパラメータが実験的に求められています。真密度の状態式情報をもとに統一型状態方程式(図中Unified)により、他の初期密度の圧力-体積関係をプロットしており、広い範囲で従来の状態方程式と一致していることが分かります。

    図 爆轟生成ガスの圧力と比体積の関係(3つの初期密度について、従来の状態式と比較)

    【成果の意義・今後の展開】
    本成果は「高エネルギー物質の高速燃焼反応現象に関する研究」に含まれ、例えば、火薬庫などの事故における誘爆現象の防止技術の開発、高速燃焼反応をコントロールした新しい発破技術の開発、水素などの可燃性ガス利用における爆燃・爆轟を考慮した安全性評価といった研究分野に応用できます。当グループでは、爆燃・爆轟現象を伴う各種技術に対して、実験的把握、シミュレーションによる評価を用いて安全面から貢献していきます。

    1) Kunihito Nagayama and Shiro Kubota (2003), J. Appl. Phys., 93, 2583-2589
    2) Shiro Kubota, Tei Saburi and Kunihito Nagayama (2020), AIP Conference Proceedings 2272,
    030012 ; https://doi.org/10.1063/12.0000799

    2021年09月16日