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  • 通勤電車における換気回数の調査とCOVID-19の空気感染リスクの評価
  • 通勤電車における換気回数の調査とCOVID-19の空気感染リスクの評価

    篠原 直秀(リスク評価戦略グループ)

    • 眞野 浩行(リスク評価戦略グループ)
    • 岩﨑 雄一(リスク評価戦略グループ)
    • 内藤 航(リスク評価戦略グループ)

    【背景・経緯】

    新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を原因とする新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国の武漢で初めて報告され、2020年から2021年にかけて世界的に拡大しました。混雑した通勤電車内は、感染リスクが特に懸念される場所の一つで、日本では人口の多くが電車やバスなどの公共交通機関を利用していることから、公共交通機関でのCOVID-19の感染リスクを低減するための効果的かつ実用的な対策が急務となっています。ここで報告する鉄道車両以外に、これまでバス車両や各種建築物(神社・映画館など)での計測も行っています。

     

    【成果】

    2020年7月、8月、12月に様々な条件下での停車中および走行中の列車内の換気量を測定しました。ドアを閉じた状態では、停車時・走行時ともに、窓を開ける面積が大きくなるにつれて換気回数が増加しました(窓を閉じた状態(0㎡)では0.23~0.78 /h、全開の状態(2.86㎡)では2.1~10 /h)。ドアが閉じている時と比べて、開いているときは1桁高い換気回数でした。走行中の列車内の換気回数は、列車の速度が上がるにつれて高くなり、20 km/hのときの10/hから57 km/hのときの42/hまで上昇しました。また、地上走行時の方が地下走行時よりも換気回数が低いことが分かりました。30~300人の乗客が電車で7~60分移動すると仮定し、市中感染率を0.0050%~0.30%とすると、12枚の窓を全て開けて(高さ10 cmまで)空調・ファンを稼働させた場合、窓を閉めて空調・ファンを稼働させなかった場合に比べて、通勤者の電車内での感染リスクは91~94%減少すると推定されました。

    研究紹介_20211130_篠原 直秀(リスク評価戦略)

    図 窓開け面積と換気回数 (7月の試験結果の例)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    鉄道における窓開けによる換気量の実態およびリスク削減効果が明らかになりました。今後、路線バスや観光バスにおける換気量の実態を把握するとともに、換気ができない場合(雨天時・猛暑時・極寒時や屋外空気が汚染された環境において)の感染対策として、空調機器に組み込むことのできる中性能フィルターの開発およびリスク低減効果の評価を行っていきます。また、飛沫感染や接触感染に関わる試験・評価も行う予定です。

     

    ※ 謝辞:測定環境を提供してくださった東京メトロ株式会社,試験に用いるマネキンを提供してくださった大洋工芸株式会社に感謝いたします。本研究は、坂口 淳 教授(新潟県立大学)、金 勲 上席主任研究官(国立保健医療科学院)、鍵 直樹 教授(東京工業大学)、達 晃一 シニアエキスパート(いすゞ自動車)らと共同で実施しました。

     

    2021年11月30日