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  • ナノ銀合成のプロセスでの爆発危険性
  • ナノ銀合成のプロセスでの爆発危険性

    秋吉 美也子(爆発安全研究グループ)

    • 岡田 賢(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】

    火災・爆発災害は滅多に起こりませんが、起こった場合は甚大な損害(致命的)に発展します。産業界では常に新しいものを求め、研究開発が進められていますが、化学物質の危険性についての十分な知識と情報網を持つことが必要です。当部門では、様々な企業より化学物質の爆発危険性に関する相談を受けており、その一例として、ナノ銀合成プロセスでの中間生成物の爆発危険性の評価について紹介します。

     

    【成果】

    ナノ銀合成のプロセスでは、雷銀(Ag3N)が生成する可能性があります。雷銀は衝撃・摩擦などの刺激に非常に鋭敏な爆発危険性の高い物質です。銀化合物とアミン類の反応に関して、種々のプロセスでの中間生成物を回収し、熱的挙動を評価しました。図に検討例をまとめています。混合直後に発生する中間生成物は111℃から発熱反応を示します(565J/g)。我々は過去において、雷銀を合成し、その熱挙動を評価しています。両者の比較により、この中間生成物は雷銀ではないことが判りました。一方で、中間生成物は反応時間を長くすると、発熱量はやや低くなるものの、発熱の開始温度が低下します。この反応過程では比較的発熱を有する中間生成物を生成するため、取り扱いには注意が必要です。さらに企業による提示条件でいくつかのプロセスにおいて、生成する中間生成物を評価しましたが、雷銀の生成は認められませんでした。

    図 銀化合物とアミン類の反応における中間生成物のDSC曲線(各々、反応時間を付記)

    図 銀化合物とアミン類の反応における中間生成物のDSC曲線(各々、反応時間を付記)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    化学物質は、その危険性について十分な知識を持たずに取り扱うと、大きな事故につながります。実際の反応工程での中間生成物に関する熱危険性評価は、事故を回避する上で重要な意味を持ちます。今回の研究では、現行プロセス内で生成が懸念された爆発危険性を有する雷銀が生成しないことを確認し、各プロセスにおける注意すべき点を整理しました。今後も、化学物質の爆発危険性評価に貢献していきます。

     

    2022年02月09日