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  • ペンスリット単結晶爆薬の屈折率
  • ペンスリット単結晶爆薬の屈折率

    若林 邦彦(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】

    パルスレーザー照射によって発生させた衝撃波を利用し、ペンスリット単結晶爆薬の衝撃起爆現象を明らかにすることを目的とした研究を実施しています。衝撃波がペンスリット単結晶の内部を伝搬する過程や起爆に至る過程を知るためにはレーザー速度干渉計を用いて実時間で粒子速度を測定することが有効ですが、ペンスリット単結晶のような透明体の場合、試料自体が時間的に屈折率分布が変化する窓材として機能するため、測定される粒子速度は屈折率変化の影響を受けた見かけの速度となります。従って、見かけの粒子速度から真の粒子速度を導出するためには、使用しているレーザー速度干渉計のレーザー波長に対するペンスリット単結晶の屈折率を明らかにしておくことが必要不可欠となります。

     

    【成果】

    温風乾燥させたペンスリット粉末をアセトンに溶かした溶液を常温大気圧下で静置し、溶媒を揮発させる方法によって再結晶化させたところ透明な結晶が得られ、大きなものでは数ミリメートル程度に達するものもありました。得られた結晶は体心正方晶の単結晶であること、密度が1.777 g/cm3であること、一番大きな結晶表面が(110)面であること等が分かりました。図は、透明媒質の有無によって顕微鏡の焦点位置が変化することを利用した方法(Duc de Chaulne(デュク ド ショルヌ)法)によって、波長532 nmに対する屈折率を測定した際の顕微鏡画像です。透明なペンスリット単結晶の内部と外部における目盛りの見え方の違いから屈折率(n)を求めたところn=1.553であることが分かりました。また、波長400~600 nmの可視光領域では波長の増加に従って屈折率が次第に小さくなり、正常分散を示すことが分かりました。

     

    図 ペンスリット単結晶の顕微鏡写真(波長532 nmの光で照明された様子、100 m/目盛り)

     ペンスリット単結晶の顕微鏡写真
    (波長532 nmの光で照明された様子、100 μm/目盛り)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本研究では可視光(特に波長532 nmなど)について、ペンスリット単結晶の屈折率を明らかにしました。これによりパラメーターや圧縮状態をレーザー速度干渉計によって高精度に測定することが可能となります。ペンスリット単結晶の状態方程式等の精密測定に取り組み、衝撃起爆現象の解明に展開したいと考えています。また、本研究で用いた屈折率測定方法はことから、希少性が高い物質や大量な取扱いが危険な物質への適用が期待されます。

    2022年02月09日