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  • 岩石の動的引張強度評価手法の開発
  • 岩石の動的引張強度評価手法の開発

    佐分利 禎(爆発利用・産業保安研究グループ)

    • 高橋 良尭(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 久保田 士郎(爆発利用・産業保安研究グループ)

    【背景・経緯】

    国内で現在も稼行中の鉱山(約500鉱山)の一部では、火薬類の爆発を利用した発破による採掘が行われています。近年、特に露天掘り鉱山では、発破により岩盤の一部が遠方まで飛んでしまう飛石や、地盤振動、騒音発生などの問題が顕在化しており、安全かつ高度に制御された発破が求められています。また、都市部では建築構造物の取壊しや部分解体に発破技術を適用する試みが注目されており、高度に制御された安全性を確保した発破技術の開発により都市発破技術としての適用が期待されています。

    こうした安全と新規技術開発の双方の観点から、岩石やコンクリートの破壊現象の把握が重要であり、現象解明にむけた研究として、衝撃荷重下での岩石をはじめとする材料の動的な応答と破壊強度の評価を進めています。

     

    【成果】

    本研究では、物体の変形を光学的に評価するデジタル画像相関(DIC)法により衝撃荷重下の岩石材料の動的挙動を探る研究を進めています。DIC法は表面を観測する手法であるため、試料内部の挙動を確認する目的で今年度は透明アクリル材料を用い、試料表面と内部の同時観測試験を実施しました。図(a)の試料下半分はDIC法のためのスペックルパターンが塗布されています。上半分は背後からの透過光で試料中の応力波を影絵として観測しました。試料右側から衝撃荷重を印加すると、図(b)のように試料上半分は圧縮波の左方向への伝播が、下半分はDIC法により圧縮ひずみの領域拡大が観測されました。圧縮波が試料の反対側に到達すると、自由端反射によって今度は引張り波が試料中を伝播します。多くの脆性材料は圧縮強さに比べ引張り強さが低いため、限界に達すると引張り破壊を引き起し、図(c)では試料上半分は破断進展の様子が、下半分ではDIC法により局所的な引張り領域の集中が観測されました。図 DIC法によるひずみ分布解析例a:実験配置写真

    (a)

    図 DIC法によるひずみ分布解析例b:圧縮波伝播によるひずみ分布

    (b)

    図 DIC法によるひずみ分布解析例c:反射引張波によるひずみ分布

    (c)

    図 DIC法によるひずみ分布解析例(: 図中X軸方向のひずみ)
    (a:実験配置写真、b:圧縮波伝播によるひずみ分布、c:反射引張波によるひずみ分布)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本研究では、DIC法を適用して材料表面のひずみやひずみ速度分布を取得し、同時に材料中の応力波伝播や破断の挙動を観察することで、材料表面の変形状態と破壊過程の相関が明らかになりました。引張り強さの定量的評価に向けては、動的な応力ひずみ関係や破壊挙動は未だ解明すべき課題が多く、今後も引き続き研究を推進していきます。

     

    謝辞 本研究の一部は、(一財)日本鉱業振興会の令和2年度試験研究所助成により遂行されたものです。ここに感謝の意を表します。

    2022年02月09日