都市部での構造物の小規模発破解体普及に向けた基礎的研究
高橋良尭(爆発利用・産業保安研究グループ)
【背景・経緯】
近年、日本では都市部を中心に構造物の老朽化が深刻な問題となっており、それらの解体や改修工事が喫緊の課題です。しかし耐震基準の厳しい日本では鉄筋コンクリート(RC)中に諸外国に比べ多くの鉄筋が使用されるなど、非常に頑丈である一方で、都市部では建物の過密化が進み重機での解体が適用できないこともあります。そこで迅速かつ省スペースの解体技術として爆薬等を用いた小規模発破技術の普及が期待されています。RC構造物へ発破を適用する場合、鉄筋が発破へ影響を及ぼすことが経験的に知られていますが、その影響については未だ十分に検討されていません。そこで、都市部での安全な小規模発破解体普及に向け、鉄筋の存在まで考慮した安全な発破設計の指針の作成を目指して研究を行っています。
【成果】
鉄筋が発破に及ぼす影響について検討を行なうため、基礎実験として鉄筋を模擬したアルミ棒を貫入したアクリル板を使用し室内発破試験を実施しました。本実験では光弾性法とデジタル画像相関 (DIC) 法の二つの光学的計測を適用することで、試験体の中心に設置した爆薬起爆後の応力状態や亀裂の発生について検討を行いました。起爆に伴う衝撃荷重がアクリル板へ印加された後、同心円状に圧縮応力が伝播している様子が光弾性法、DIC法による計測結果共に確認できました。圧縮応力に対してアルミ棒周辺では特に大きな変化は確認できませんでした。その後、アクリル板縁の自由面へ到達した圧縮応力波は自由端反射し、引張応力として伝播します。この反射引張応力がアルミ棒周辺へ到達するとその周辺で応力集中が発生し、圧縮強度よりも引張強度が小さいアクリルにアルミ棒周辺で亀裂が発生することが明らかになりました。
図 試験体の概要と光弾性法によるアルミ棒周辺の応力状態の可視化結果
【成果の意義・今後の展開】
本研究では、光弾性法とDIC法を適用することでアクリル中のアルミ棒周辺に発生する応力状態や亀裂の進展挙動を評価し、発破対象中に部分的に異なる材質が存在することでその周辺では応力状態が大きく変化し、亀裂が発生しやすい状況が生まれていることが明らかとなりました。今後はより実施工条件に近い条件下での評価を行うことで、都市部での小規模発破技術の普及にむけ更なる研究を進めて行きたいと思います。
2022年03月30日