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  • 海洋生分解性プラスチック導入の可能性がある製品群の特性化:海洋プラスチックごみ低減効果推定モデリングに向けて
  • 海洋生分解性プラスチック導入の可能性がある製品群の特性化:海洋プラスチックごみ低減効果推定モデリングに向けて

    梶原秀夫(環境暴露モデリンググループ)

    • 石川百合子(環境暴露モデリンググループ)
    • 恒見清孝(排出暴露解析グループ)
    • 小野恭子(排出暴露解析グループ)
    • 蒲生昌志(安全科学研究部門)

    【背景・経緯】

    環境に廃棄されたプラスチックごみが海洋に流出すると長期間にわたって環境にとどまり続け、海洋プラスチック量が増加し続けるという「海洋プラスチック問題」が懸念されています。海洋プラスチック問題を解決するための一つの方法として、海洋生分解性プラスチック が注目されています。本研究では、 海洋生分解性プラスチックを導入した場合の海洋プラスチックごみ低減の効果を、環境(河川・海域)モデルを用いて解析することをめざしています。海洋生分解性プラスチック導入の可能性がある複数の製品を取り上げ、製品の特性を文献情報と業界団体・企業へのヒアリングに基づいて整理し、 環境モデルの解析対象とすることの妥当性について考察を行いました。

     

    【成果】

    表に海洋生分解性プラスチック導入の可能性のある製品群別に得られた特性を示しました。漁網については現在の海洋生分解性プラスチックでは強度・耐久性の課題の克服が困難であることから、また、農業用マルチフィルムについては、農地で使用後に土壌に漉き込むという使用法が想定さるため、海洋生分解性プラスチックが導入される可能性は低いと考えられることから、解析対象製品とする妥当性は低いと思われます。レジ袋・ゴミ袋は居住環境周辺で排出されるフィルム形状の製品であるのに対し、被覆肥料は農業活動に伴う農地で排出されるカプセル形状であるため、特徴の異なる排出シナリオを解析対象とすることが可能になると思われます。また、海洋生分解性プラスチック導入の時期や程度については、どの製品についても具体的・定量的な見通しが立っていない状況であるため、製品に使われる材料がいっぺんに全部、海洋生分解性プラスチックに置換されるシナリオを想定することで、最大でどの程度の海洋プラスチックが低減されるかを推定するのが妥当と思われます。

     

    表 海洋生分解性プラスチック導入可能性のある製品群の特性

    20220330_研究紹介_梶原秀夫

    *)適用可能性は当該製品に最も適した海洋生分解性材料の技術的な可能性を示す。
    (〇:適用可能、 △ :適用可能だが課題あり、× 適用不可能)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本研究で検討を行った4つの製品群のうち、2つの製品群(漁網、農業用マルチフィルム)については、適用可能性や製品の使用方法の観点から、環境モデルでの解析対象とする妥当性が低く、2つの製品群(レジ袋・ゴミ袋、被覆肥料カプセル)は妥当という結論となりました。今後は、本研究の成果を用いて解析シナリオやパラメータの設定を行った上で環境モデル解析を行い、海洋生分解性プラスチックを導入した場合の海洋プラスチックごみ低減の効果の推定を行う予定です。本研究は日本リスク研究学会第34回年次大会で報告されました。

     

    【謝辞】

    本研究はNEDOプロジェクト「海洋生分解性プラスチックの社会実装に向けた技術開発事業研究開発項目/①海洋生分解性に係る評価手法の確立/研究項目⑥海洋プラスチック低減効果の推定」(2020~2024)の一環として行われました。ここに謝意を表します。

    2022年03月30日