気象データに基づく地球温暖化による我が国の気温への影響分析評価
近藤 康彦(持続可能システム評価グループ)
【背景・経緯】
近年、農作物の作付けが悪くなったり、熱帯夜が続いたりすると、地球温暖化の影響で気温が上昇したと耳にすることが多くなってきました。また線状降水帯の発生による局所的な集中豪雨や、台風の発生・上陸回数の変化もこの温暖化の影響との見方もされています。その一方で、温暖化によって現実にどの程度気温が上がったのか、また気象状況が過去からどのように変化したのか、などについてはあまり詳しく説明されていないように思います。そこでこのような素朴な疑問に答えることを目的として、本研究は気象庁が保有する1900年頃から観測されている気象データのうち気温のデータを用いて、具体的な数値によって気温がどのように変化してきたかを明らかにするものです。
【成果】
地理的影響、また都市化など人間活動に伴う排熱による気温への影響を出来る限り排除するため、外洋上の孤島・離島の気温データのうち、日平均気温に拠る年平均気温(※)に着目して、本研究では観測開始(南大東島を除き概ね1900年頃)から現在までの約120年間の気温変化について検討を行いました。図は石垣島、南大東島、八丈島、佐渡島に東京、札幌を加え、年平均気温を時系列で示したものです。八丈島を除く3島の過去100年間あたりの気温上昇は約1.3~1.4℃程度でした。一方、八丈島は殆ど気温変化がありませんでした。また都市化などによる気温への影響があると考えられる東京と札幌では、観測開始年(1880年頃)から2020年の間の過去100年間あたりの気温上昇は約2.4℃、2℃であり、孤島・離島より0.6~1.1℃大きな値でした。
図 石垣島、南大東島、八丈島、佐渡ヶ島および東京、札幌における年平均気温の推移
※ 日平均気温とは我が国の気象台や測候所の場合、1時から24時までの毎正時24回の気温観測値の平均を言う。また月(年)平均気温は毎日(月)の平均気温の月(年)間の平均を言う。
【成果の意義・今後の展開】
地球全体では、気温の上昇具合は地理的状況や都市化などに拠って差は生じますが、化石燃料を使い続けてきた120年程度での気温上昇は、我が国においては1.5℃前後になっていたことが判りました。またこの気温上昇に対して、都市化などによる気温上昇への影響は1℃程度と考えられ、かなり大きな値になっていることが判りました。今後は気温変化だけでなく、地形や標高など地理的な要因、また都市化などの人工的な要因による気象への影響について検討を続けていきます。
2022年03月30日