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  • ニトロセルロースを含有する火薬類の安定度試験に関するJIS開発
  • ニトロセルロースを含有する火薬類の安定度試験に関するJIS開発

    岡田 賢(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】

    火薬類の安定度試験(耐熱試験)は、火薬類取締法で実施が義務づけられているもので、火薬または爆薬の経時変化を確認し、自然発火による災害を未然に防止する重要な試験です。しかしながら、日本で行われている耐熱試験(アーベル試験)は発色の判定を目視で行うため、個人差があり、精度が不十分な試験方法です。近年、火薬類の安定度を正しく評価するため、精度の高い判定手法の導入が求められており、国連勧告試験でも導入されている高精度な火薬類安定度試験であるベルクマン・ユンク・シーベルト試験(“BJS試験”という)およびメチルバイオレット紙試験(“MV試験”という)をJIS K 4810及びJIS K 4822に新たに追加しました。

     

    【成果】

    BJS試験は、試験管に入れた試料を一定温度に加熱し,試料の分解によって発生する酸化性ガス(主として二酸化窒素)を水に吸収させ,酸性水溶液を水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定することによって酸化性ガスの発生量を定量します。この発生量の大小によって安定度を調べる試験法です。MV試験は、試験管に入れた試料を一定温度に加熱し,試料の分解によって発生する酸化性ガス(主として二酸化窒素)をメチルバイオレット紙と呈色反応させ,これが変色するまでの時間を計って,この時間の長短によって安定度を調べる試験法です。今回、窒素量、安定剤の異なるニトロセルロースおよび無煙火薬(13種類)を用いて、JISに導入できるように試験法や試験条件の検証を行いました[1][2]。MV試験とBJS試験には相関があることがわかりました。(図)JIS原案作成委員会において2年にわたり議論を行い、JIS K 4810及びJIS K 4822に追加することになりました。(JISは現在準備中で、2022年度に発行予定です。)

     

    図 MV試験とBJS試験の相関関係(●ニトロセルロース、〇無煙火薬)
    合格ライン:MV>30 or 35min, BJS<2.5mL/g

     

    【成果の意義・今後の展開】

    JIS開発より、以下が明らかになりました。(1)市場に出回っている火薬類については、BJS試験およびMV試験で合格となりました。(2)自然発火の恐れがある劣化火薬(NC-1987)については、BJS試験とMV試験共に不合格の判定となりました。(3)BJS試験とMV試験は結果に相関がありました。今後、JIS改正版が発行後に、火薬類取締法で本試験法を採用するかどうかの検討が開始され、社会実装(法律への導入)が予定されます。国際化に対応した試験法が導入されることが期待されています。

     

    [1]火薬類安定度試験に関わるJIS改正 (その3)、岡田賢、火薬と保安 53 (2), 29-38, (2021)

    [2]火薬類安定度試験に関わるJIS改正 (その4)、岡田賢、加藤勝美、火薬と保安 54 (1), 28-33, (2022)

     

    2022年03月30日