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  • 岩石の動的引張強度評価のための荷重印加方法を開発
  • 岩石の動的引張強度評価のための荷重印加方法を開発

    佐分利 禎(爆発利用・産業保安研究グループ)

    • 高橋 良尭(爆発利用・産業保安研究グループ)
    • 久保田 士郎(爆発利用・産業保安研究グループ)

    【背景・経緯】
    鉱山採掘やトンネル工事で利用される発破作業では、破壊対象箇所の地形や強度・特性などに応じて発破方法や使用薬量を設計する必要がありますが、設計が適切でないと岩盤の一部が遠方まで飛んでしまう飛石などの問題を発生してしまうため、効率性と安全性を両立した発破技術が求められています。都市部においては、建築構造物の取壊しや部分解体に発破技術を適用する試みが注目されています。周辺住民に対する騒音や飛散物の発生などの抑制が求められる一方で、日本では構造物が強固に作られていることから、高い発破能力と安全性を兼ね備えた都市発破技術の開発が期待されています。高度な発破技術の開発のため、本研究では衝撃荷重下での岩石をはじめとする材料の動的な応答と破壊強度の評価を進めています。

     

    【成果】
    衝撃荷重下の岩石試料の動的変形挙動を探るため、変形挙動の解析に物体の変形を光学的に評価するデジタル画像相関(DIC)法を用いて研究を進めています。評価では衝撃力の調整や均一な荷重印加が重要になるため、本研究ではこれらの課題について、インパクタを利用した試料への衝撃荷重方法の検討を進めました。
    図(a)に示す試料下半分にはDIC法解析のためのパターンが塗布されています。上半分では試料中の応力波を観測します。図(b)にはインパクタを用いず爆薬を試料に直接接触させて荷重を印加した場合の結果を比較として示します。試料右側から衝撃が印加されると、試料中を伝播する衝撃波面が湾曲している様子が観測されています。一方、今回検討したインパクタを介して衝撃荷重を印加すると、図(c)のように試料上半分では、圧縮波面が湾曲せずに左方向へ伝播していく様子が観測され、下半分ではDIC法の解析により試料内部の圧縮波面の伝播と共に試料表面で圧縮ひずみ領域が拡大していく様子が観測されました。

     

    研究紹介_佐分利a

    (a)

     
    研究紹介_佐分利b

    (b)

     
    研究紹介_佐分利c

    (c)

    図 DIC法によるひずみ分布解析例(e_xx: 図中X軸方向のひずみ)
    (a:インパクタによる実験配置、b:爆薬による直接荷重印加による圧縮波伝播の様子とひずみ分布、c: インパクタ利用の荷重印加による圧縮波伝播の様子とひずみ分布)

     

    【成果の意義・今後の展開】

    本研究では、岩石材料の動的引張強度評価のための試験方法の開発において、インパクタを用いた試料への荷重印加方法を検討しました。これにより、試料への衝撃力の調整や一様な荷重印加が可能になり、材料表面の変形と破壊過程の相関がより正確に測れるようになりました。動的な応力ひずみ関係や破壊挙動について、衝撃荷重力を調整して引き続き研究を推進していきます。

     

    謝辞 本研究の一部は、(一財)日本鉱業振興会の令和3年度試験研究所助成により遂行されたものです。ここに感謝の意を表します。

    2022年09月27日