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  • 気象データに基づく我が国における地域性の比較に拠る気温上昇への影響分析評価
  • 気象データに基づく我が国における地域性の比較に拠る気温上昇への影響分析評価

    近藤 康彦(持続可能システム評価グループ)

    【背景・経緯】
     近年、地球温暖化の影響で気温が上昇したといわれています。そこで昨年、我が国において地勢の面から他の影響を受け難いと考えられる、島嶼部の日平均気温の変化について分析を行い、その結果、過去100年の間に0.5 ~1.5℃程度上昇したことを明らかにしました。
     本研究は、東京、大阪、名古屋、およびこの3大都市とほぼ同緯度に存在する気象台や測候所の観測地点において、100年以上に渡り観測された気象データを比較検討することで、地勢あるいは人間の社会活動などの要因が、日平均気温、また最高・最低気温の変動に、どの程度影響を与えたのかを明らかにするものです。

     

    【成果】
     東京、名古屋、大阪、また南北間の気温差をできるだけ排除するため、3都市と北緯が±2分30秒以内に入り、100年以上観測を続けた気象台や測候所の年平均気温、日最高気温と日最低気温の年平均値の気象データを用いて検討を行ないました。
     表はこれら気象データに一次直線近似を施した場合の過去100年間の気温の上昇度をまとめたものです。この表から東京と大阪を除き、日平均気温差は概ね1.5~1.8℃でありました。一方、東京都に隣接する千葉県の銚子と勝浦では1℃程度であり、同緯度といっても地勢や社会活動に拠る排熱などの要因で0.5~1℃の差が生じることがわかりました。
     また最高気温の上昇度は0.6~2℃以上であり、同緯度内で比較しても1℃程度の幅がありました。一方最低気温は、1.3~3.2℃であり、こちらも同緯度内で2℃程度の幅がありました。従って日平均気温の上昇度への影響は、最低気温の上昇度の方が大きい可能性があることがわかりました。

     

    表 東京、名古屋、大阪および同緯度での100年間の最高気温、日平均気温、最低気温上昇度

    研究紹介_近藤

    ※日平均気温とは我が国の気象台や測候所の場合、1時から24時までの毎正時24回の気温観測値の平均を言う。また月(年)平均気温は毎日(月)の平均気温の月(年)間の平均を言う。

     

    【成果の意義・今後の展開】
     地球規模で同一の場所といえる我が国の気象観測地点でも気温上昇度には0.5~1℃の差があることから、温暖化による気温上昇をより正確に把握するには、地勢や社会活動を考慮して観測点を選ぶことが重要であることが確認できました。また我が国では過去100年間の気温上昇が概ね2℃未満であったことは、今後の温暖化対策のシナリオ策定に寄与すると考えます。今後は温暖化が与える気温変化に加え、寒暖や降水量への影響についても検討していきます。

    2022年11月28日