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  • 世界標準となる自然資源利用のインパクト評価手法の提案に向けた国際的合意形成
  • 世界標準となる自然資源利用のインパクト評価手法の提案に向けた国際的合意形成

    本下晶晴(持続可能システム評価研究グループ)

    • 横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)

    【背景・経緯】
     水や金属を始めとする自然資源は今後も人口増加や経済発展に伴い需要が伸びるものと予想され、有限な自然資源をどうやって持続的に利用するかはこれからの重要な課題となっています。LCAにおいてもこうした自然資源の利用の影響評価は行われていますが、様々な手法が乱立しており、LCAの急速な普及の中でユーザーが利用しやすい標準モデルを専門的知見に基づいて提案・推奨することが求められています。国連環境計画(UNEP)が主導するLife Cycle Initiativeの中で国際的合意形成に基づいたライフサイクルインパクト評価手法を開発するプロジェクトが進められており、その中で我々は自然資源利用に関するインパクト評価のタスクフォースリーダーおよびメンバーとして手法開発を先導しています。

     

    【成果】
     2019年から本タスクフォースにて議論を始め、世界21カ国から60名以上の国際的な専門家や関係者とともに開発を進めてきました。現在までに様々な関連用語の定義や影響パスの図式化を完成しており、それらに対応したインパクト評価モデルを提案すべく、既存の20手法(図1)のレビューを行いました。レビューにおいてはできるだけ主観的判断を排除すべく、8項目について4段階での推奨レベルの評価を行い、タスクフォースメンバー内での合意形成を進めました。その結果、現在の資源価格の過小評価に伴う価値損失を自然資源利用のインパクトとして評価するモデルを採用することとし、最新の資源価格データなどを基に影響評価係数の算定を行いました。現在はその係数の公開に向けた準備として、ケーススタディーを通じたデータの検証を進めており、検証結果を基に必要に応じた更新や修正などを経て2023年度の公開を目指して準備を進めています。

    研究紹介_本下

    図1 レビューの対象とした20の既存モデルとその分類
    各手法が影響を代表するものとして採用している単位種類(Physical metrics/Economic metrics)、および影響として資源価値の損失そのものを評価しているか(No-compensation)、あるいはその損失を補填するために必要な対価で評価しているか(Compensation)によって分類している。

     

    【成果の意義・今後の展開】
     既存の評価手法を基に特徴を整理しつつ、最適な評価手法を国際的合意に基づいて推奨することで、LCAの実務担当者が悩むことなくLCAの中で自然資源利用に伴う影響評価を進めることができるようになります。現在は、主に鉱物資源利用をターゲットにしたインパクト評価係数の開発を進めていますが、同時に水や土地など他の自然資源の利用に関わるインパクト評価係数の開発も進め、今後はより多くの自然資源利用に伴うインパクト評価が可能になることを目指しています。

    2023年01月24日