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  • 再生プラスチック製容器の安全性評価方法の構造
  • 再生プラスチック製容器の安全性評価方法の構造

    梶原秀夫(環境暴露モデリンググループ)

    • 小栗朋子(環境暴露モデリンググループ)
    • 蒲生昌志(安全科学研究部門)

    【背景・経緯】
     サーキュラーエコノミーの実現のためには、各種材料のリサイクル量の増大が欠かせませんが、再生プラスチックの使用量拡大のためには、食品容器や日用品など再生プラスチックを容器として用いた場合の、人健康への影響を評価し、安全性を担保する必要があります。しかし、再生プラスチックを用いた食品容器のリスク評価手法については、比較的定まった方法があるものの、日用品、化粧品容器のリスク評価手法や安全性基準については定まったものがありません。本研究では、再生プラスチック製の容器の安全性評価方法の構造と要点を理解するために、国内外での食品容器や化粧品容器に再生プラスチックを用いる場合の安全性の評価方法に関する既往文献の情報を整理しました。

     

    【成果】
     文献調査の対象は備考に示す7文献(日本語2文献、英語5文献)であり、文献3、4、5は食品を、文献1、2、6、7は化粧品を対象としています。各文献の内容から「再生プラスチック製の容器に含まれる化学物質の安全性評価の方法」に関係する部分を下に示したような模式図を用いて整理し、評価を構成する各項目の要点をまとめました。安全性確認の方法には、①許容暴露量とプラスチック由来の暴露量を比較する方法、②許容媒体中濃度とプラスチック由来の媒体中濃度を比較する方法、③許容ペレット中濃度とプラスチックペレット中濃度を比較する方法がありました。許容媒体中濃度から許容ペレット中濃度を算出する場合には、プラスチック中の化学物質の全量が媒体に移行するという仮定(全量溶出の仮定)が用いられることが多いことがわかりました。暴露シナリオで考慮すべきパラメータには化粧品の場合、製品タイプ(残存するもの、洗い流されるもの)、適用領域、1回あたり使用量、使用の頻度と継続時間、暴露経路などがありました。

     

     

    研究紹介_梶原

    図 再生プラスチック製容器に含まれる化学物質の安全性評価方法の模式図(文献6の例)
    青矢印は化学物質の流れに沿ったプロセス(計算)を、緑矢印はその逆方向のプロセス(逆算)を、赤矢印は安全性の確認を行うために数値の比較を行っている部分を示しています。

     

    【成果の意義・今後の展開】
     再生プラスチック製の食品容器、化粧品容器の安全性評価の方法を化学物質の流れに沿った模式図を使って整理することにより、安全性確認の方法や、安全性評価を構成する各項目の要点が整理されました。今後は、実際に再生プラスチック中に含まれうる化学物質や具体的な製品を想定した安全性評価を試みることで、現実に即した安全性評価手法を構築することができ、結果として再生プラスチックの用途拡大・使用量増大につながると期待できます。

    ※ 本研究の実施にあたっては(株)平和化学工業所にご協力いただきました。ここに謝意を表します。

    備考:レビュー対象文献
    文献1 Guidelines on ANNEX I to Regulation (EC) No 1223/2009 on the Cosmetic Product Safety Report(EU 2013)
    文献2 The SCCS’s Notes of Guidance for the Testing of Cosmetic Substance and Their Safety Evaluation 11th Revision(EU 2021)
    文献3 食品用器具及び容器包装における再生プラスチック材料の使用に関する指針(ガイドライン)について(厚労省 2012)
    文献4 食品用器具及び容器包装に関する食品健康影響評価指針(食品安全委員会 2019)
    文献5 Use of Recycled Plastics in Food Packaging (Chemistry Considerations): Guidance for Industry(FDA 2021)
    文献6 Initial safety assessment of recycled plastic for packaging of cosmetic products(デンマーク環境保護庁 2021)
    文献7 Cosmetic Packaging Guidance_ How to Evaluate Recyclates in Cosmetic Packaging?(Pereda 2021)

    2023年03月23日