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  • セルロースナノファイバーの安全性評価書の公開
  • セルロースナノファイバーの安全性評価書の公開

    小倉 勇(排出暴露解析グループ)

    • 藤田克英(リスク評価戦略グループ)
    • 森山 章弘(リスク評価戦略グループ)
    • 眞野浩行(リスク評価戦略グループ)
    • 田井梨絵(リスク評価戦略グループ)

    【背景・経緯】
     セルロースナノファイバー(CNF)は、バイオマス由来の新しい素材として、幅広い分野への活用が期待されています。一方、新しい材料が社会で使われていくためには、これらの安全性を確認しておくことが重要です。
     当部門では、他のユニットや他機関と共同で、NEDO委託事業「非可食性植物由来化学品製造プロセス技術開発」(2017~19年度)及び「炭素循環社会に貢献するセルロースナノファイバー関連技術開発」(2020~24年度予定)において、CNFの安全性に関する研究に取り組んできました。その一環として、2022年12月に、CNFの安全性情報についてのこれまでの成果と取り組み状況、さらに国内外の論文情報をとりまとめた「CNFの安全性評価書」を公開しました。

     

    【成果】
     本書の内容は図の通りです。第2章から第6章でヒト健康影響に関する情報として、動物試験や細胞試験の結果をまとめています。第2章は、発がん性や遺伝的障害のスクリーニング試験である遺伝毒性試験の結果についてまとめています。第3章は、繊維状物質で懸念される中皮腫についての知見をまとめています(産総研健康医工学研究部門が担当)。第4章から第6章では、それぞれ吸入暴露、経皮暴露および経口暴露による影響をまとめています。第7章は、ヒト暴露に関する情報として、作業環境調査や模擬試験など、CNFの排出・暴露に関する評価事例を紹介し、注意すべきプロセス、対策と管理、計測法についてまとめています。第8章と第9章は、環境影響に関連する情報として、それぞれ水生生物への影響と生分解性についての知見をまとめています。最後に、第10章では、各章の結果を総括しています。

     

    研究紹介_小倉

    図 CNFの安全性評価書

     

    【成果の意義・今後の展開】
     今後、さらに多様なCNFに関して吸入影響や排出・暴露の評価を進めるとともに、情報が少ない中皮腫や生態影響の評価も進め、それらの評価結果を2024年度に成果文書としてまとめる予定です。これにより、CNFを取り扱う事業者の適切な自主安全管理を支援し、CNFの応用開発と普及を後押しします。CNFの社会実装・市場拡大を早期に実現することで、二酸化炭素の排出量を削減し、エネルギー転換・脱炭素化社会の実現に貢献します。

    2023年03月23日