• ホーム
  • 研究紹介
  • 大規模イベントにおける新型コロナウイルス感染症対策の調査と評価
    -大規模イベント会場における密の程度を評価する-
  • 大規模イベントにおける新型コロナウイルス感染症対策の調査と評価
    -大規模イベント会場における密の程度を評価する-

    内藤 航(リスク評価戦略グループ)

    【背景・経緯】
     新型コロナウイルス感染症の流行が続く中、スタジアムのような大型集客施設で開催する大規模イベントは、参加人数の制限や声出し禁止等の制限が設けられていました。コロナ禍において安全に大規模イベントを開催するためにはどのようなことに注意し、どのような対策を立て、その対策の効果はどの程度なのか。当部門では、他領域の研究者とともに、プロスポーツ団体(例えばJリーグ、Bリーグ等)と連携して、大規模イベントにおける観客の行動や密の程度等の計測を行い、その結果を用いた感染リスク評価や事業者の指針作り等に協力してきました。ここでは、当部門が主に担当したイベント会場での二酸化炭素濃度(CO2)測定の結果を紹介します。

     

    【成果】
     多様なイベントにおける様々な空間においてCO2センサを用いてCO2濃度を計測しました。CO2濃度は空間の密閉密集の状態を知る一つの指標になると考えられています(文献a)。国立競技場等の観客席のような屋外環境の場合、観客席には大勢の人がいますが、CO2濃度の上昇は限定的で換気状態は良いことがわかります(図1)。一方で、トイレや選手控室のような室内場所ではCO2濃度の上昇し、特に観客席トイレでは一時的にCO2濃度が2000ppm近くまで上昇する傾向がみられました。CO2濃度は高止まり状態が続くわけではなく、早い減衰が見られることより、一定の換気率は確保されていると考えられました。CO2センサによる測定結果は、現場の換気状態を知る指標として用いるだけでなく、その空間における人の行動や人数等と組み合わせて感染リスクの計算にも活用しました。様々なイベントで測定したCO2濃度の特徴や傾向は産総研の主な研究成果等(例えば文献b, c, d)として公表されています。

     

    研究紹介_内藤

    図1 国立競技場でのJリーグの試合におけるCO2濃度の経時変化の例

     

    【成果の意義・今後の展開】
     これまで数多くの大規模集客イベントの様々な環境において、観客の行動や換気状態等の計測をし、データを分析して、新型コロナウイルス感染症のリスク評価や管理・対策の検証、さらには大規模イベント会場での感染抑止に向けた指針作成に貢献してきました。今後は、産総研ならではの多彩なセンサリング技術を活用して、感染症のリスク評価の高度化や快適な空気環境の創出に繋がる研究を進めていきたいと思います。

    謝辞
    産総研・新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボメンバーとして実施しました。
    https://unit.aist.go.jp/georesenv/res-geo/COVID19-Lab/

    a) 奥田 知明, 村上 道夫, 内藤 航, 篠原 直秀, 藤井 健吉, ウイルス感染症対策としてのCO2濃度の利用にむけた値の解釈について, リスク学研究, 2020, 30 巻, 4 号, p. 207-212

    b) Jリーグのスタジアムやクラブハウスなどで新型コロナウイルス感染予防のための調査(第一報)https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2021/nr20210112/nr20210112.html

    c) Jリーグのスタジアムやクラブハウスなどで新型コロナウイルス感染予防のための調査(第二報)https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2021/nr20210125/nr20210125.html

    d) 政府の技術実証による大規模イベントでの感染予防対策の調査(第二報)
    https://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/2022/nr20220118/nr20220118.html

    2023年03月23日