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  • 日本のウォーターフットプリントと世界のウォーターセキュリティへの責任分析
  • 日本のウォーターフットプリントと世界のウォーターセキュリティへの責任分析

    本下晶晴(持続可能システム評価研究グループ)

    • Stephan Pfister(スイス連邦工科大学チューリッヒ校)
    • 佐々木貴央(立命館大学)
    • 南斉規介(国立環境研究所)
    • 橋本征二(立命館大学)
    • 横井崚佑(持続可能システム評価研究グループ)
    • Kamrul Islam(持続可能システム評価研究グループ)
    • Matthias Finkbeiner(ベルリン工科大学)

    【背景・経緯】
     将来の人口増加や経済発展により水資源需要は今後も増加すると予測されており、どうやって持続的に水資源を利用していくのかは世界的にも重要な課題とされています。こうした水資源の持続的な利用に関して我々は過去の研究で、世界の多くの流域における水資源利用は既に持続的な許容量を超えており、そこには世界貿易を通じた間接的な需要が関わっていることを解明しました(https://riss.aist.go.jp/research/20210916-1571/)。今回の分析では更に日本の生産・消費活動に関わるウォーターフットプリントが世界の流域におけるウォーターセキュリティにどのような影響を与えているのかを分析することで、サプライチェーンを通じた世界のウォーターセキュリティへの責任を明らかにしました。

     

    【成果】
     日本のウォーターフットプリントとしての海外で誘発する水消費量は世界全体で53.2(billion m3)となり、これは仮想水貿易(virtual water trade)により削減できた日本国内での水消費量の3倍に相当し、国内の水消費を抑制できる一方で水利用効率の低い財の輸入に依存していることがわかりました(図1)。このうち環境容量を超過した持続的でない水消費は全体の11%であり、世界平均の24%と比べるとその割合は低く、日本のサプライチェーンは持続的でない水資源利用に依存する割合は比較的低い結果となりました。一方で、タイのように環境容量超過割合が相対的に低くても(4%)その国における環境容量を超過した水消費量の中で日本が誘発する水消費量の割合が多いなど、貿易相手国の立場における持続的水資源利用への責任を考慮することの重要性も示唆されました。
     本成果は下記論文にて公表されており、日本が購入する全406部門の財に関わる水資源消費量を原単位化したデータベースも補足情報として合わせて公表しています。

     

    Motoshita et al. (2023) Resour. Conserv. Recycl. 196, 107055
    https://doi.org/10.1016/j.resconrec.2023.107055

     

    図1 日本が世界の流域で誘発している水消費と
    仮想貿易による日本国内での水消費削減量のバランス

     

    【成果の意義・今後の展開】
     世界に広がる複雑なサプライチェーンの中での水資源利用への我々の活動の関わりを分析するのは労力を要しますが、本分析手法により世界のウォーターセキュリティとの日本の産業活動の関わりを俯瞰的に分析することを支援できます。今後は自然関連情報開示タスクフォース(TNFD)を始めとした事業活動に関わるサプライチェーンにおける環境影響管理への要請に対する対応をサポートするツールの開発へと発展させるとともに、水資源だけでなくより多くの自然資源利用に伴う分析の実現を目指しています。

     

    ※ 本研究の一部は科研費 国際共同研究強化(B)(18KK0303)、基盤研究(B)(19H04345)、基盤研究(A)(21H04944)により行われたものです。ここに謝意を表します。

    2023年09月07日