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  • 煙火打ち上げ玉のCEマーク取得のための安全性評価
  • 煙火打ち上げ玉のCEマーク取得のための安全性評価

    松永猛裕(爆発安全研究グループ)

    【背景・経緯】
     国産の煙火打ち上げ玉を欧州に輸出して消費するというニーズが国内の煙火製造業者からあり、これに伴い、国内で初めてCEマーク取得のための安全性評価を技術コンサルティングとして行いました。具体的にはDIRECTIVE 2013/29/EU EN 16261-3に規定されている加熱試験および振動試験を行います。その後、試験後の煙火打ち上げ玉について発射実験を行い、製品に異常がないことを確認します。2つの試験は実施中に不慮の爆発が可能性は低いのですが、暴発時のハザードを考えると十分に耐爆性のある施設で試験する必要がありました。このため、加熱試験は第五事業所5-2C棟の大ピット、振動試験は西事業所の耐爆試験にて行いました。発射実験については、依頼した煙火製造業者が実施しました。

     

    【成果】
     図1に加熱試験および振動試験の実施状況を示します。評価した煙火打ち上げ玉は直径3~10インチまで14種類あり、各種類3個を試験しました。行った試験の範囲で暴発は起こりませんでした。試験後の煙火打ち上げ玉を煙火製造業者が持ち帰り、欧州のNB(Notified Body)の立会いの下、発射試験を行ったところ、異常はみられませんでした。これにより、試験した製品についてはCEマーク取得の安全性試験に合格したとNBに認めていただきました。
     これで対応終了と思われたのですが、もう一つ、NBから問題提起がありました。それは使われている割薬の危険性に関してです。割薬は空中で玉を開発させるとともに星と呼ばれる火薬に火を点ける役目があります。このため、割薬は爆発威力の高いものが多いです。国連の危険物分類では割薬の危険性によって最も危険性の高いクラス1.1になってしまい、輸送の際、厳しい制限が生じます。これについては煙火製造業者と相談し、割薬組成を検討し、NBに報告した結果、クラス1.3Gとして扱えることが認められました。

     

    図1 CEマーク取得のための加熱試験(左)と振動試験(右)の実施状況

     

    【成果の意義・今後の展開】
     安価な中国製は諸外国で多く使われています。これに対し、とてもきれいだが値段が高い日本の煙火打ち上げ玉は、使われることがありませんでした。しかし、今こそ、日本の花火の優位性をアピールするチャンスだと思います。そのためには国連の危険物分類やCEマークなど国際的な取り決めをクリヤする必要があります。今回はCEマーク取得のための試験を国内で初めて行いましたが、こういう要望が今後も増えて、花火産業が活発になることを期待しています。

    2023年09月07日